(講師のお名前/肩書きは、当該月時点のものです。)
2024年
12月都市工塾
日 時:2024年12月23日(月)18時30分~
場 所:東京大学工学部14号館1階141教室+ズーム会議によるハイブリッド 講義
テーマ:「東日本の玄関・大宮における新たな都市づくりへの挑戦
~大宮駅グランドセントラルステーション化構想について~」
講 師: 小林 功 氏(さいたま市都市局都心整備部東日本交流拠点整備課長
埼玉県さいたま市にあるJR大宮駅は、東京以北最大のターミナル駅で、JRでは東北・山形・秋田・北海道の東北系統と上越・北陸の上越系統の合計6の新幹線、在来線は宇都宮線、高崎線、京浜東北線、埼京線、川越線が、私鉄では東武野田線、埼玉新交通伊奈線が乗り入れており、乗り入れ路線数は東京駅に次いで全国2位、1日平均乗降者数は約70万人と埼玉県内最多を誇っています。首都圏広域地方計画においても、「大宮」は、東日本からの多種多様なヒト、モノが実際に集結して交流する対流拠点として、また、企業の取引機会拡大や販路開拓、連携によるイノベーションの創出等の取組支援や、広域周遊観光ルート構築のための玄関口機能を果たすとともに、首都直下地震の発災時 には首都圏の機能をバックアップするための最前線と位置付けられています。
こうした大宮の立地条件を活かして、さいたま市では、現在、大宮駅の駅前広場を中心とした交通基盤整備、駅前広場に隣接する街区のまちづくり、乗換改善等を含めた駅機能の更なる高度化を三位一体で推進する「大宮駅グランドセントラルステーション化構想」の取り組みを進めています。今回は、実際の現場を担当する小林さんからこの構想の概要についてお話いただきました。
1.さいたま市の紹介
*データから見るさいたま市 *都市構造 *大宮駅周辺のまちづくり(歴史・経緯)
2.大宮駅周辺地域戦略ビジョン
*平成22年5月大宮駅周辺地域戦略ビジョンを策定
(東日本の顔となるまち/おもてなし、あふれるまち/氷川の杜、継ぐまち)
3.大宮GCS化構想とGCSプラン2020の紹介
*大宮駅グランドセントラルステーション化構想 (市民・事業者・行政の共通指針)
*GCSプラン2020(構想を具体化かつ実現可能なものとするための計画)
4.これからの駅前開発に向けて
*未来の大宮コンセプトブック
*今後の進め方 <誇れる田園都心 大宮 >潤いの緑と大都心の両立/豊かさと可能性にみちた日本一のまち 大宮駅周辺まちづくりを実現した未来の大宮は、氷川神社や見沼田んぼに代表される潤いの緑、偉大な駅と駅前を中心とした日本有数の大都心を両立し、偉大な駅と駅前を中心とした、 誰しもが活き活きと自分の人生を生きることができる、未来への可能性に満ちた日本一のまちです。
11月都市工塾
日 時:2024年11月25日(月)18時30分~
場 所:東京大学工学部14号館1階141教室+ズーム会議によるハイブリッド講義
テーマ:「「都心の中心」四谷駅前地区における公民連携のまちづくり
~コモレ四谷プロジェクト~」
講 師: 楠本 博 氏
(UR都市機構東日本都市再生本部事業推進部長)
山手線内側のほぼ中央に位置し、交通の利便性が高く商業の中心としても栄えている四谷エリア。新宿御苑はじめ自然豊かなスポットが点在し、近年再開発が進み、緑豊かなビジネス街・都心住宅地としても発展しています。四谷駅前地区では、小学校の統廃合と財務省官舎の廃止により、新宿区と地元住民で跡地利用を含むまちづくりの検討がなされ、2004年から事務局を担っていたUR都市機構が、2010年に当地区の権利者で構成される再開発協議会から、2013年に新宿区からそれぞれ要請を受け、市街地再開発事業の施行者として事業を遂行することとなり、2020年1月に施設建築物が竣工、2020年7月には、現在のコモレビの広場が整備完了しました。本プロジェクトでは、UR都市機構が、地権者および民間開発事業者等と中立公正な立場で調整しながら事業を進めていく公民連携のまちづくり手法がとられましたが、本事業の考え方および概要、同地区の現状等について、UR都市機構の楠本さんからお話を伺いました。
1.はじめに *UR都市機構についてのご紹介など
2.事業の背景 *四谷地域の概要、事業実施までの経緯など
3.事業の概要 *当地区における市街地再開発事業の概要、特徴など 4.竣工後の姿 *竣工後のコモレ四谷について、写真等でご紹介
10月都市工塾/第9回「都市と芸術 研究会」公開パネル
日 時:2024年10月19日(土)10時~12時
場 所:東京大学工学部14号館1階141教室+ズーム会議によるハイブリッド講義
基本テーマ:「都市は芸術、都市は劇場~芸術文化とまちづくり~」
講演1「都市と文化芸術―世界の都市を巡って」
講 師: 原田 敬美 氏
((株)SEC計画事務所代表取締役、元港区長 )
講演2「六本木アートナイトの過去・現在・未来」
講 師: 武村 俊 氏
(六本木アートナイト実行委員会初代事務局長)
芸術文化と都市の極めて密接な関係性については、これまでも、多くの文明批評家や都市・建築研究者などから指摘されてきました。曰く、“都市は、人間のもっとも偉大な芸術作品である。”(ルイス・マンフォード)、“都市はさまざまな劇場をもつけれど、都市全体が一つの劇場である。街路や広場や建築物は舞台であり、都市住民は役者である。”(布野修二)などです。こうした考え方に基づき、現在、多くの「都市」や「まち」が、芸術文化を都市再生やまちづくりの原動力として活用する試みを進めています。
今回は、お二人の講師から、まず「芸術文化とまちづくり」という視点で、海外事例の紹介・地方自治体での文化政策の位置づけ等について概括的なご講演をいただき、次いで、東京都港区六本木を舞台に、現代アート、デザイン、音楽、映像、パフォーマンス等を駆使して、非日常的な一夜限りの体験をつくり出すイベント「六本木アートナイト」についてのご講演をいただいて、参加者一同で、芸術文化活動と都市再生・まちづくりとの相互関係について討議しました。
コメンテーター:飯田 一夫 氏(バシェ協会理事)
石田 義明 氏(NPOフォーラム自治研究理事)
若松 久男 氏(若松久男建築研究所)
モデレーター: 澤井 安勇 氏(NPO都市工会代表)
9月都市工塾
日 時:2024年9月30日(月)18時30分~
場 所:石川県庁(講師)+東京大学工学部14号館1階141教室(変則対面参加)+ズーム会議(オンライン参加)による変則ハイブリッド講義
テーマ:「令和6年能登半島地震からの復興に向けて」
講 師:
鈴見 裕司 氏
(
石川県土木部参与兼能登半島地震復旧・復興推進部参与)
2024年1月1日16時10分、能登半島をマグニチュード7.6・震源の深さ16kmの大地震が襲い、石川県輪島市、志賀町で震度7を観測したほか、半島全域にわたる強震により多くの建物の倒壊・損壊、土砂災害等が発生し、さらに、輪島市では市街地の火災による「複合災害」も発生、多数の死者・重軽傷者が生じました。また、石川県珠洲市、能登町及び志賀町の3市町、新潟県上越市では、津波により約200haが浸水し、石川県、富山県、新潟県の広い範囲で、液状化による被害が発生しました。このほか、電気、ガス、上下水道等のライフラインへの深刻な被害に加え、道路、鉄道等の交通インフラにも甚大な被害が生じ、
住民生活や中小企業、農林漁業や観光業等の経済活動にも大きな支障が生じています。
地震発生から9カ月が経とうとしている現在、日本海側最大の半島である被災地の復旧・復興の進捗、課題、さらには今後の展望について、鈴見さんからお話を伺いました。
1. 石川県や能登半島の概要 *地勢、アクセス、生業(なりわい)、居住人口の推移等
2. 地震の被害と応急復旧の取り組み *道路、河川、港湾等のインフラ被害と応急復旧の考え方
3. 能登半島地震被害の特徴 *津波と火災、港湾漁港と地盤隆起、上下水道、液状化等
4. お住いの支援 *地域特性を踏まえた建設型仮設住宅、借上げ型仮設住宅等 5. 創造的復興への取り組み *石川県創造的復興プラン ~能登が示す、ふるさとの未来~
7月都市工塾
日 時:2024年7月22日(月)18時30分~
場 所:東京大学工学部14号館1階141教室+ズーム会議によるハイブリッド講義
テーマ:「首都東京を支える強靭で持続可能な水道事業について」
講 師: 石田 紀彦 氏(東京都水道局建設部長(特命担当部長兼務))
東京都民の毎日の生活を支えている水道事業は、江戸時代まで遡る長い歴史があります。明治19(1886)年のコレラの大流行等を契機として、明治31(1898)年12月に淀橋浄水場から神田・日本橋方面への給水が開始され、昨年で近代水道125周年を迎えました。
現在、首都直下地震などの大規模災害への対策、高度経済成長期に集中的に整備した浄水場の更新時期の到来、デジタル化の急激な進展、建設業の2024年度問題等、東京の水道事業を取り巻く環境は、かつて経験したことのない難しい局面にあります。今回は、東京都水道局の石田さんから、首都東京を支える強靭で持続可能な水道事業の過去・現在・未来についてお話いただきました。
1. わが国の水道事業が直面する課題
*人口減少社会の到来:人口減少社会を迎え、料金収入となる有収水量は1998年のピーク時から2100年には約4割になる想定です。
*水道事業は主に市町村単位で経営されており、その多くが小規模であり経営基盤が脆弱です。水道事業に携わる職員数も限られ、1980年から2020年の間に約4割の職員が減少しており、適切な資産管理や危機管理対応に支障を及ぼす恐れがあります。
2.東京都水道局の概要
3.(都における)水道システムの強靭化(レジリエンス)
*地球約3分の2周分に相当する約2.7万kmの管路については、道路下に布設され、短期間での取替工事等ができないことを踏まえ、優先順位をつけて耐震化工事を行い、同時にバックアップ機能の強化としての給水所や送水管の整備を推進します。
4.持続可能な事業運営に向けて(サスティナブル)
*衛星を活用した出来形測量を行い、高精度かつ合理的な出来形確認、出来高管理などICTを活用した工事の省力化などを、今後、行っていきます。
5.東京都職員の魅力
6月の都市工塾
日 時:2024 年 6月 24日(月)18 時 35 分~20時
場 所:東京大学本郷キャンパス工学部 14 号館 1 階 141 教室+ズーム会議によるハイブリッド講義
テーマ:「路地を巡って20年~全国路地のまち連絡協議会~」
講 師:今井 晴彦 氏
(全国路地のまち連絡協議会世話人/(株)アルメック技術顧
問)
20年以上前、向島のシンポジウムで、ふと、まちの個性を形作しているのは建物というより道であり、特に、その歴史を作ってきた路地ではないかと思いつき、全国のまちを集めた路地サミットの開催を提案し、その後ほぼ毎年、全国路地サミットを開催するなど路地に係る活動を続けてこられた今井さんですが、今回は、街の賑わいや魅力を生み出すなど都市にとって大きな資産となっている路地の定義・効用等及び全国路地サミットの開催状況など、路地についてこれまで実施されてきた諸活動について、今後の活動予定も含めお話いただきました。
1.全国路地のまち連絡協議会の概要
2003年: 全国路地サミット開催(北区十条)
2004年: 大阪市での全国路地サミットで協議会発足
登録団体数: 現在26団体
2.全国路地サミット
これまでの開催地:東京十条、大阪法善寺・空堀、東京神楽坂、長野諏訪、静岡浜名湖・
新居、長野善光寺・松代、神戸、新潟、東京すみだ、埼玉小鹿野、大分別府、 広島尾道、
香川観音寺、埼玉飯能、伊豆松崎、青森八戸、長崎、京都
3.その他の取組
【街歩き/イベント開催】
小鹿野路地スタ、ロジスリドン富士市、路地あるき(毎年各地で)
【路地園芸】
2006年に向島で路地園芸の実態調査、十条の路地で路地園芸を実施
【路地に関する情報発信】
ホームページ作成、出版「路地からのまちづくり」(学芸出版社)等
【路地端会議】
路地の特性、路地の都市における役割、課題等について議論する会議を開催
4.補足: 路地について
5.今後の予定
7月6日 神楽坂にて設立20周年記念イベント、10月全国路地サミットin下田
5月の都市工塾
日 時:2023年5月27日(月)18時30分~20時05分
場 所:東京大学工学部14号館1階141教室+ズーム会議によるハイブリッド講義
テーマ:「関西の都市整備について」
講 師: 小原 啓蔵 氏
(独立行政法人都市再生機構/株式会社URリンケージ OB)
安田 和弘 氏
(独立行政法人都市再生機構西日本支社都市再生業務部事業
企画課長)
関西エリア、特に大阪は、2025 年大阪・関西万博の開催とともに、IR の誘致、 国際金融都市 OSAKA やスーパーシティの実現に向けた取組等が推進されるな ど、大きく変わろうとしています。 ポストコロナを見据え、大阪・関西万博やスーパー・メガリージョン形成等の インパクトを活かし、東西二極の一極を担う「副首都」としてさらに成長・発展 していくため、大阪の目指すべき都市像、まちづくりの戦略と今後の都市開発の 方向性を示した「大阪のまちづくりグランドデザイン」を、大阪府・大阪市・堺 市が 2022 年 12 月に策定しました。 今回は、UR 都市再生機構関係者の小原さんと安田さんから、このグランドデ ザインについて解説いただくとともに、新大阪・大阪エリアの「うめきた 2 期 (グラングリーン大阪)プロジェクト」はじめ UR が関与している関西各地の 主要都市開発プロジェクトについてお話いただいた。
1. 大阪の都市整備について
大阪のまちづくりグランドデザイン
2. UR が関与している関西の主要プロジェクト
① 新大阪・大阪エリア:うめきた2 期区域(グラングリーン大阪)
プロジェクト、新大阪駅周辺まちづくりの動き
② 大阪城・周辺エリア:大阪城東部地区まちづくり、京橋駅周辺ま
ちづくりの動き
③ 京阪都市軸郊外拠点エリア:京阪枚方市駅周辺再整備
④ 神戸市「都心・三宮再整備」:三宮クロススクエア東地区
4月の都市工塾
テーマ:「幕張新都心のまちづくりの現在地と未来
~MAKUHARIの未来を紡ぐ~」
講 師: 久能 淳史 氏
(千葉市総合政策局未来都市戦略部幕張新都心課)
1989年の幕張メッセのオープンでスタートした「幕張新都心」は、千葉県が1973年から千葉市幕張地先に埋立造成した土地に、国際交流機能、国際的業務機能、中枢的業務機能、研究開発機能、学術・商業・文化機能、スポーツ・レクリエーション機能、住宅機能等の諸機能の一体的な集積を目指した計画都市です。
まちびらきから30年、イオンモール幕張新都心・三井アウトレットパーク幕張など商業・ホテルの誘致及び幕張ベイタウン・幕張ベイパークでの住宅整備の推進などにより、「職・住・学・遊」の複合機能を備えた未来型の国際業務都市として、日々約23万人が活動する大きなまちへと発展を遂げてきました。千葉市では、令和4年8月に20~30年後の将来を見据えたまちづくりの方向性を示す「幕張新都心まちづくり将来構想」を策定したところですが、今回は、千葉市の久能さんから「幕張新都心」の特徴とまちづくりのあゆみを振り返りつつ、国家戦略特区での挑戦や幕張豊砂駅の新設など最近の取組み、海浜幕張駅周辺や幕張豊砂駅周辺で行われている官民連携の取組みなどについてお話いただきました。
(1)幕張新都心の概要
・位置や計画フレーム
・まちづくりのコンセプト
・位置や計画フレーム
・まちづくりのコンセプト
(2)これまでのまちづくりと現在地
・これまでのあゆみ
・各地区の状況
(3)幕張新都心まちづくり将来構想
(4)最近の取組み
・景観形成推進地区
・国家戦略特区、近未来技術実証
・JFA夢フィールドの整備、包括連携協定
・脱炭素先行地域
・幕張豊砂駅の整備
(5)今後の取組み
・幕張豊砂ウォーカブル
・中心地区エリアマネジメント
・海浜幕張駅新改札口
・幕張海浜公園活性化施設整備・運営事業
・マリンスタジアム再整備
3月の都市工塾
日 時:2024 年 3 月 25 日(月)18 時 30 分~20時
場 所:東京大学本郷キャンパス工学部 14 号館 1 階 141 教室+ズーム会議によるハイブリッド講義
テーマ:「都市観光(アーバンツーリズム)へのまなざし」
講 師:井上 晶子 氏
(立教大学観光研究所客員研究員/杏林大學特任講師)
何かと話題の多い大阪万博まで、一年余り。万博関連のインバウンド効果に期待する声も多く聞かれます。東京オリンピック、大阪万博、様々な国際会議など大都市のビッグイベントに伴う観光のもたらす経済効果は計り知れないものがあり、今や観光の意義は、その経済効果に集約されているかのようにも見えます。
昨今、こうした都市における観光・交流を魅力ある都市づくりにつなげていく「都市観光(アーバンツーリズム)」への関心が高まっていますが、都市観光を経済面のみでとらえるのではなく、交流や学び等の場として、さらには地域の人々の誇りとアイデンティティの維持の営みとしてとらえ地方都市の活性化につなげていくことができないか、といった視点から、立教大学観光研究所の井上さんにお話いただきました。
1. 都市観光とは
(1)「観光」の意義と効果
(2) 都市観光とは 定義を巡っての所論と共通性*定義を巡っての所論と共通性 都市観光における「都市」とは?
・・ 機能・人口密度
2. 都市観光の魅力
(1) 都市観光への注目とその経緯
*産業の衰退とインナーシティ問題、都市の衰退と都市の再生
*移り変わる観光のまなざし
(2) 都市観光の魅力
*都市観光の構成要因
*都市観光の特質は何?
・・外部のまなざしがとらえる都市観光の魅力
3.事例:『蔵のまち川越』、そして、『小江戸川越』
4.都市観光の課題と対応に向けての私案
(1)持続性の観点から:金太郎あめから賞味限切れにならないために
(2)都市観光のステークホルダーの観点から
(3)量より質の観点から
➡まちの文脈掘り起こしと見える化、そしてNOがいえる観光地に
2月の都市工塾
日 時:2024年2月19日(月)18時30分~
場 所:ズーム会議によるオンライン講義
テーマ:「“とかいなか”地域振興モデルの探索
~首都圏周縁部における持続的コミュニティ振興のあり方を求めて~」
講 師:熊倉 浩靖 氏(高崎商科大学特任教授)
“とかいなか”(トカイナカ)をご存じですか。都会(とかい)と田舎(いなか)を掛け合わせた造語で、都心から概ね1時間乃至1.5時間エリアの首都圏とその隣接県の都市群を指し、コロナ禍以降は、移住や二拠点生活の希望地としても注目されています。これらの地域では、“とかいなか”という立地特性自体が重要な地域資源であることの再発見も含めて、既存の地域コミュニティの“磨きなおし”(再構築)の動きが見られます。今回は、群馬県南部の“とかいなか”の住人でもある熊倉さんから、首都圏周縁部における地域コミュニティの現状と地元自治体を中心に進められている持続的地域コミュニティ再構築の動きについて、事例紹介を含めてお話いただきました。
1. 探索に至った3つの流れ
①群馬県内等市町村職員・住民の嘆きと要望
②群馬県等首都外縁部の勘違い:反省と展望
③コミュニティ振興“とかいなか”パターンの模索
2.小学校区や公民館区が“とかいなか”コミュニティ振興の基盤となりうる根拠
①“とかいなか”を改めて定義すれば
②“とかいなか”の二重構造
③小学校区や公民館区の基盤は明治期成立町村
④最も“とかいなか”的な地域のコミュニティ:「地区」は明治期成立町村がほとんど
3.「地区」の再発見と組み立て直しによる持続的発展への模索
①富岡市、②藤岡市、③沼田市、④渋川市、⑤玉村町⑥新しい動きとして1:みなかみ町生物圏保存地域の拡大移行地域としての“とかいなか”
⑦新しい動きとして2:館林市・桐生市・足利市の“とかいなか”日本遺産連携
⑧参考・先進事例:埼玉県ふじみ野市
4.まとめに代えて:中間的にもならない中間報告と自らへの課題
①“とかいなか”地域振興策のモデル化
②移住・定住問題への“とかいなか”型提案:企業こそ移住・定住の持続的供給源
③外国籍住民の暮らしと働きの場としての“とかいなか”:多様な産業の存在と
包み込む地域コミュニティ力
1月の都市工塾
日 時:2024年1月29日(月)18時30分~
場 所:東京大学工学部14号館1階141教室+ズーム会議によるハイブ
リッド講義
テーマ:「『国際交流拠点・品川』の形成に向けたまちづくり」
講 師:櫻井 昭夫 氏
(JR東日本 マーケティング本部 品川ユニット)
2020年3月14日、山手線の品川駅と田町駅の間に、同線30番目の駅として、高輪ゲートウェイ駅が誕生しました。隈研吾氏設計による木の質感を生かしたユニークな駅舎デザインで話題となった同駅周辺では、現在、品川車両基地跡地開発「TAKANAWA GATEWAY CITY」と命名された大規模な都市開発プロジェクトが、UR施工の土地区画整理事業と併せて進行中です。
今回は、JR東日本の櫻井さんから、品川のまちづくりの変遷、「品川駅北口駅改良事業」および「品川駅街区地区開発」の概要等の解説を含め、この高輪ゲートウェイシティ構想についてお話しいただきました。
1. JR東日本の会社概要
2. 品川のまちづくりの変遷
① 品川の歴史
② 現在のまちづくりの原点~まちづくりガイドラインに至
る経緯
*品川駅・田町駅周辺まちづくりガイドライン
*品川駅・田町駅周辺まちづくりガイドライン2014
* 品川駅北周辺地区まちづくりガイドライン
* 品川駅・田町駅周辺まちづくりガイドライン2020
*品川駅えきまちガイドライン~ 高輪築堤の発見 ~
*品川駅北周辺地区まちづくりガイドライン2021
*品川駅えきまちガイドライン創造編
3. JR東日本が取り組むまちづくり
①品川駅北周辺地区 「TAKANAWA GATEWAY CITY」
②品川駅街区地区
2023年
12月の都市工塾
日 時:2023年12月18日(月)18時30分~20時10分
場 所:東京大学本郷キャンパス工学部14号館1階141教室+ズーム会議によるハイブリッド講義
テーマ:「気候変動の時代に都市・地域はどう適応するか」
講 師:加藤 孝明 氏(東京大学生産技術研究所教授/東京大学社会科学研究所特任教授)
近年、気候変動に伴う水害の激甚化・頻発化が顕著になっており、
2023年においても、6、7月の梅雨前線や台風に伴う大雨により、多く
の犠牲者・被害者が生じています。2022年度の国土交通白書によれ
ば、「地球は、近年、温暖化が進んでおり、1850年~2020年の期間に
おける温暖化は紀元後(直近2000年以上)前例のないものであり、この
ままの状況が続けば、更なる気温上昇が予測される。また、これら気候
の変化の要因について、人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させ
てきたことには疑う余地がない」ことが指摘されています。今後のトレ
ンドをふまえると、都市・地域も気候変動に適応しなければなりません
が、関東大震災から100年にあたる今年最終月の都市工塾では、こうし
た長期的、世界的な気候変動に都市・地域はどう対応すべきか、東京大
学の加藤さんから次の内容で問題提起と論点提示を行っていただきました。
1.公助への依存増大:公助万能論?
2.災害時自立圏構想
3.机上と現場
4.まちづくり・都市計画の潜在力
5.人口減時代の地域づくり・まちづくり
11月の都市工塾
日 時:2023年11月20日(月)18時30分~
場 所:東京大学本郷キャンパス工学部14号館1階141教室+ズーム会議によるハイブリッド講義
テーマ:「超高層建物の解体工事の現状とその合理的解体工法等の概要」
講 師:中村 隆寛 氏(鹿島建設技術研究所建築生産グループ)
石田 武志 氏(鹿島建設機械部機械技術イノベーショングル
ープ)
今、東京では200以上の高層ビルが建設されるという空前の大規模再開発が進行中ですが、その背景の一つとして1970年代から80年代に建設された超高層ビル群が解体・リニューアルの時期を迎えているという事情があります。公共交通機関やインフラ設備が集中する都心地域における超高層ビルの解体工事には、高い安全性と環境への配慮などが求められています。 今回は、こうした都市部における超高層建物の解体工事に取り組まれている鹿島建設の中村さんと石田さんから、都市部における解体工事の現状、地上・地下躯体の合理的解体工法等の概要、浜松町世界貿易センタービル解体工事での適用結果等について解説していただきました。
1.都市部の解体工法の概要
*解体工法の歴史,現状の解体工法の概要の紹介
2.地下躯体合理化解体工法の紹介 ~鹿島マイクロブラスティング工法
*地下躯体の合理化かつ環境配慮解体工法である,微少量の爆薬を用いたCON切断工法「鹿島マイクロブラスティング工法」の概要と適用事例など
3.地上躯体合理化解体工法の紹介 ~鹿島スラッシュカット工法
*地上躯体の合理化かつ環境配慮解体工法である,斜めスラブ切断を利用した超高層建物のブロック解体工法「鹿島スラッシュカット工法」の概要と浜松町世界貿易センタービル解体工事での適用結果の紹介
10月都市工塾/「都市と芸術 研究会」公開パネル
日 時:2023年10月21日(土)10時~12時20分
場 所:東京大学工学部14号館1階141教室+ズーム会議によるハイブリッド講義
テーマ:「高齢社会における芸術文化を考える
~クリエイティブ・エイジングへの取り組み~」
先進諸国を中心として世界的な高齢社会が進展していますが、既に日本は世界一の高齢社会です。2022年9月の総人口に占める65歳以上の人口の割合は29.1%と主要国中第1位。第2位のイタリアを5%も上回っています。世界中で進行する待ったなしの急速な高齢化に対して、社会福祉の分野をはじめとして各政策領域で対応が講じられていますが、芸術文化の世界も例外ではありません。欧米社会では、早くからアート、ダンス、演劇などのジャンルで「創造的高齢化(Creative Aging)」をテーマに様々な取り組みがなされてきましたが、わが国においても近年、高齢社会に対応すべく種々の試みが実施されるようになりました。今回の都市工塾/「都市と芸術 研究会」は、こうした高齢社会における都市の芸術文化のあり方、課題等について意見交換を行いました。。
基調講演1 「高齢社会が紡いだ劇場文化」
講 師: 永井 聡子 氏(静岡文化芸術大学文化政策学部教授)
1.はじめに
2.「劇場」とは
3. 「専門の領域」と「市民(高齢者)」の領域の融合
4.事例紹介
5.高齢者が紡いだ劇場文化
6. おわりに
基調講演2 「高齢者が輝く、高齢者と輝く~さいたまゴールド・シアターの事例」
講 師: 請川 幸子 氏((公財)埼玉県芸術文化振興財団事業
部副参事)
1.はじめに
2.さいたまゴールド・シアターの挑戦
3.高齢者と演劇をするということ
4.ゴールドの輝きを人々に
5.芸術的価値から社会的価値へ
コメンテーター:
飯田 一夫 氏(バシェ協会理事)
石田 義明 氏(NPOフォーラム自治研究理事)
森 徹 氏(NPO上野の杜芸術フォーラム代表)
モデレーター: 澤井 安勇 氏(NPO都市工会代表)
9月都市工塾
日 時:2023年9月25日(月)18時30分~
場 所:東京大学本郷キャンパス工学部14号館1階141教室+ズーム会議によるハイブリッド講義
テーマ:「多摩ニュータウンにおける宗教施設の計画」
講 師:高原 柚 氏(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程)
哲学者の鷲田清一氏は、古い都会にあってニュータウンにないものとして、「宗教施設」、「古い大木」、「街中の闇(いかがわしさを持った盛り場)」をあげていますが、日本を代表するニュータウンである多摩ニュータウンには、多くの宗教施設(その多くは、開発前から存続する既存宗教施設)が存在します。先のニュータウン観は、計画の「新しい建設」という側面に注目したものだと思われますが、何もない「タブラ・ラサ」(何も刻まれていない石板)のような土地は滅多に存在せず、都市計画や建築は多くの場合、対象地域の物理的・社会的・歴史的条件に基づいて設計されています。今回は、「多摩ニュータウンにおける宗教施設の新設・活用計画に関する研究」をされた東京大学の高原さんから、計画の「既存物に手を加える」側面について、宗教施設計画を通じて見えてくる計画と既存の建造物や文化、コミュニティの関わりの観点からお話いただきました。
1. 「ニュータウンには歴史がない」?
2.
既存物としての宗教施設
3. 多摩ニュータウン計画のあゆみ
4. 多摩ニュータウンの宗教施設計画
(1)新しく設置する
(2)元々あるものを活用する
5. 都市における既存物の位置付け
7月都市工塾
日 時:2023年7月24日(月)18時30分~
場 所:東京大学本郷キャンパス工学部14号館1階141教室+ズーム会議によるハイブリッド講義
テーマ:「人と自然のいい関係~八ヶ岳の森から」
講 師: 鳥屋尾 健 氏(公益財団法人キープ協会環境教育事業部 事業部長)
公益財団法人キープ協会は、米国人ポール・ラッシュ博士が1938年に山梨県北杜市高根町清里に建設した清泉寮を母体とする団体で、山梨県から貸与されたJR清里駅前から八ヶ岳横断道までの広大な土地を拠点に、人と自然の出会いの場づくりを目指した様々な事業に取り組んでいます。近年、国連の持続可能な開発目標(SDGs)が各方面で叫ばれるなかで、環境教育に対する期待は年々増大していますが、「持続可能な社会づくりへの主体的な参加」を目指して、循環と共生という観点からの参加の意欲を育むための体験活動の促進などを提唱し、実践しているキープ協会の様々な活動について、公益財団法人キープ協会の鳥屋尾さんからお話いただきました。
1. 公益財団法人キープ協会概要、自己紹介
2.環境教育とインタープリテーション
3.人と自然の出会いの場づくり
4.人と自然が出会うことで うまれてくること
5.森の楽童、森のようちえん、森deリトリート等の事例の中
で考えたこと
6月都市工塾
日 時:2023年6月26日(月)18時30分~
場 所:東京大学本郷キャンパス工学部14号館1階141教室+ズーム会議によるハイブリッド講義
テーマ:「URのモードチェンジと関西における最近の都市再生事業」
講 師:小原 啓蔵 氏(株式会社URリンケージ西日本支社都市整備本部長)
独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)は、大規模な基盤整備を伴う事業や密集市街地の整備等政策的意義の高い都市再生事業を推進するとともに、被災地の復興や社会的に必要とされる賃貸住宅の供給などを主な目的とする独立行政法人で、2004年に都市基盤整備公団(日本住宅公団がルーツ)と地域振興整備公団の一部が合流して誕生した組織です。同機構は、独立行政法人になったとき、繰越欠損金が約7,300億円ありましたが、この繰越欠損金は2018年度末に解消されました。このタイミングのことをURのモードチェンジと言いますが、今回は、このモードチェンジに至った経緯と、モードチェンジ以降の特に関西における最近の都市再生事業の状況、併せて「URであーる」とコマーシャルされるUR賃貸住宅が、かつて「高・遠・狭」と称された公団住宅から変わった部分などについて、URリンケージの小原さんからお話いただきました。
1. URのモードチェンジ(第3期中期(平成26年度~30年度)を終えて)
2. 最近の関西の都市再生事業
① 密集市街地整備プロジェクト(門真市、神戸市)
② 地方都市再生事業(徳島県美波町)
南海トラフ巨大地震に伴う津波被害に対する事前防災
③ 安満遺跡公園防災公園事業(大阪府高槻市)
④ 大和川左岸地区での土地区画整理事業(堺市)
高規格堤防と阪神高速大和川線の一体的なまちづくり
⑤ うめきたプロジェクト
3. UR賃貸住宅に関する最近の話題
5月都市工塾
日 時:2023年5月29日(月)18時30分~
場 所:東京大学工学部14号館1階141教室+ズーム会議によるハイブリッ
ド講義
テーマ:「食育で育む未来のまちづくり~活発に進む各地の健康な食の
取り組み~」
講 師:金丸 弘美 氏
(食環境ジャーナリスト、総務省地域力創造アドバイザー他)
わが国では、生活習慣病の拡大、医療費用の増大、食料自給率の低下による食や環境の激変などを背景として、食育(食に関する教育)の理念等を33箇条にわたって定めた「食育基本法」が2005年に制定されました。国民医療費については、2020年には1955年の約180倍の42兆9,666億円と増大し、国家財政の大きな課題となっている一方、2020年の日本の人口1億2278万人の28.4%が65歳以上の高齢者で、人口は年々減少するが高齢化率は年々増加の一途をたどっており、それが医療費の増大にもつながり、若い世代の負担増加を招きかねない状況になっています。また、若い世代にも生活習慣病が増えており、経済活動にも支障をきたす恐れがあることから、健康で健全な生活は、国家の重要な課題として、食料自給率向上の課題などとともに国の施策として進められています。今回は、食環境ジャーナリストの金丸さんから、農業や学校・病院等における子供たちの健康な未来を創るための取組みの事例などをご紹介いただきながら、食育という視点からのまちづくり論をお話いただきました。
1. 奄美諸島の食と健康調査からわかった長寿の要因
2.「100歳まで長生きな人はなにをたべているか」
3.長寿日本一 滋賀県 生活リズムがとれている人が健康
4.「食育基本法」ができた背景 日本は自給率先進国最低38%
5.高齢化率28.9%、国民医療費42兆9,665億円
6.若い世代の生活習慣病が拡大
7.学校・病院食での健康推進が進められてい
立川市「ふじようちえん」、笠岡市「笠岡中央病院」
8.食と地域と経済を繋ぐ活動が広がっている
豊岡市「コウノトリ育むコメ」
9.食のワークショップを各地で開催
唐津市、小美玉市、高山市
10.食と体験と観光を連携
4月都市工塾
日 時:2023年4月24日(月)18時30分~
テーマ:「人口の変化から見た中野のまちづくり」
講 師:石井 大輔 氏(中野区企画部長)
近年、各地区で急速な都市再開発が進む東京都ですが、その中でも変化の激しい街のひとつが中野(東京都中野区)です。中野駅周辺では、警察大学校などの移転で生まれた駅前の広い土地を利用して100年に一度といわれる大規模なまちづくりが進んでおり、区民やアーティストに慕われてきた中野サンプラザも開業から50年で幕を閉じ、再開発によって新たな複合施設の建設が予定されています。また、西武新宿線の連続立体交差化や沿線まちづくり、木造住宅密集地域における防災まちづくりなど、長年の課題解決に向けたまちづくりも進められています。今回は、中野区の石井さんから、中野駅周辺開発を中心に中野のまちづくりを紹介していただき、併せて、これまでのまちづくりに伴う人口の変化から見た今後の政策的課題を考察していただきました。
1.中野のまちの変化、人口の変化
(1)区政100年間の人口の動き
(2)昼夜間人口の推移
2.昼間人口、交流人口の増加は地域経済の発展に寄与するか
(1)中野四季の都市(まち)の影響を見る
(2)中野サンプラザのDNAを生かす
3.夜間人口の変化から見た中野区全体のまちづくり
(1)人口のフローとストック
(2)持続可能なまちをめざすには
3月都市工塾
日 時:2023年3月27日(月)18時30分~
場 所:東京大学工学部14号館1階141教室+ズーム会議によるハイブリッド講義
テーマ:「東京の再開発-街とつながるグラウンドレベルのデザイン」
講 師:大江 新 氏 (建築家、法政大学名誉教授)
東京では様々な地区で大規模な再開発が進行中で、どのエリアでも高密度・高性能な超高層ビル街が形成されつつありますが、こうしたビルは性能面での進化が目覚ましい反面、人々が住み働く街との接点、特に足元部分のつくりには、未熟で納得のいかないケースも多く見られます。
「心地良さ」や「場所への愛着」など、人々の空間に対するヒューマンな感覚を丹念にとらえて「街らしさ」を創出し、地域に溶け込む大型建築をデザインするには、高度な技術とともに素朴な日常感覚や身近な実体験に頼るべき部分が多いのではないでしょうか。今回は、建築家の大江さんから、景観面や計画面、ビルに備わる懐(ふところ)や空地と緑、多様性の創出や歩行者と車の関係など街や建築について考える際の視点やデザイン手法について、豊富な事例等の紹介を含め語っていただいた。
1.現代都市にとっての景観尺度
*より多くの人々にとっての居心地を最大化できるつくり
2.広場 を縁どる結界:外周広場型と沿道建物型
3.大型ビルが備えるべき資質
*閉塞感の軽減(光、風、視界)/街への貢献(通り抜け、滞留)4.オフィスビル足元の街らしさ:ロビーと店舗街のレイアウト
5.大型マンションや団地が備えるべき接近性と開放度6.過去の成果
や 痕跡との協調
*人が作った造形(街区、建物ほか)/自然が作った造形(土地の
起伏、河川、植生)
2月都市工塾
日 時:2023年2月20日(月)18時30分~
場 所:東京大学工学部14号館1階141教室+ズーム会議によるハイブリッ
ド講義
テーマ:「博 物 館 動 物 園 駅 の 法 則」
― M in M(ミュージアム インメトロ)プロジェクトの30年
講 師:森 徹 氏 (NPO上野の杜芸術フォーラム 代表)
上野動物園の北、東京芸大や国立博物館などが隣接する一角に佇む小さな西洋風の建物をご存じですか。これが、京成電鉄の旧・博物館動物園駅。日暮里―上野公園駅(現・京成上野駅)の中間に位置する駅として1933年に開業し、その後、老朽化・乗降客数の減少などにより1997年営業休止、2004年に廃止されました。この旧・博物館動物園駅の現存する駅舎・ホーム等を、広い意味の博物館・ミュージアムとして進化再生させる構想をM in M(ミュージアム イン メトロ)と名付け、その実現に向けて30年以上にわたり多角的活動を続けてこられたNPO上野の杜芸術フォーラムの森さんから、長い活動を通じて見えてきた『博物館動物園駅の法則』について語っていただきました。
1月都市工塾
日 時:2023年1月23日(月)18時30分~
場 所:ズーム配信によるオンライン講義
テーマ:「座敷ぼうき作りの伝統を伝える」
講 師: 小林久美(ふじみ野市教育委員会社会教育課)他
埼玉県入間東部地区は昔、座敷ぼうきとその原料となるホウキモロコシの主産地だった。かつては日本のどこにでも見られた座敷ぼうきだが、現在では衰退し、その作り手もふじみ野市内に一人の職人のみとなっていた。その後、座敷ぼうきに関心を持っていた市民がお互いにつながり、座敷ぼうき作りの技術を後世に伝えたいという思いから行政に働きかけ、ほうきづくり指導者養成講座開催に至り、平成31年4月に友の会を結成。材料の入手が困難だったホウキモロコシ栽培も行い、また、市内の小学校の地域学習の授業の中で、ホウキモロコシ栽培から小さな箒作りの体験などの座敷ぼうきの出前授業なども行っている。
今回は、ふじみ野市の小林さんと友の会・伝承会の皆さんから、地域の伝統文化の継承活動という視点からまちづくりのあり方を語っていただきました。
2022年
12月都市工塾
日 時:2022年12月19日(月)18時30分~
場 所:東京大学工学部14号館(本郷キャンパス)141教室(1F)+ズ
ーム配信
テーマ: 「ランドスケープのちから」
講 師:植野 糾 氏
(株式会社ランドスケープデザイン 代表取締役社長)
環境問題やSDGsなどの世界的課題に対して、建築界では解決への道を探る動きが活発化しています。一方、常に広域的な視点を持ち、主に自然や植物を扱って景観や環境を創造してきたランドスケープ界では、それらに対応する優れた技術やナレッジを数多く蓄積し、思考や志を高めてきました。こうした「ランドスケープのちから」を、ランドスケープアーキテクト集団を束ねて活躍されている植野さんから、幾多の実践例などにより紹介・解説していただいた。
10月都市工塾/「都市と芸術 研究会」公開パネル
(第21回東京大学ホームカミングデイ参加企画)
日 時:2022年10月15日(土)10時~12時
場 所:東京大学工学部14号館141教室+オンライン
テーマ: 「都市とパブリックアート~公共空間のための芸術」
現代都市と芸術文化との深い関わり合いについては、都市を特徴づける劇場・ホール、美術館などの芸術文化施設の存在とそれを支える芸術家・文化芸術団体等の活動と並んで都市空間の中に芸術作品を設置するパブリックアートや都市内の特定の地域・機関を限定して実施される芸術フェスティバルの存在などの視点で語られることが多い。特に、近年活発化している「公共空間のための芸術」としてのパブリックアート活動については、美術館・ギャラリーという既成の空間にとらわれず自由に作品を発表したいというアーティストの欲求と特定空間の美術的・文化的付加価値を高め、他の地域との差別化を図ろうとする都市再開発の動きなどを重ねてみることができる。今回の公開パネルでは、それぞれの視点・事例について、お二人の講師から課題提起の講演をお願いし、都市におけるパブリックアートの現代的意義について考えてみた。
基調講演1:「芸術と大衆-岡本太郎のパブリックアート」
講 師:大杉浩司 氏
(岡本太郎記念館 主任研究員)
基調講演2:「都市の戦略、アートの戦略」
講 師:大森みどり 氏
(森ビル株式会社 都市開発本部計画推進部部長/新領域
企画部専門役員)
9月都市工塾
日 時:2022年9月26日(月)18時30分~
場 所:東京大学工学部14号館(本郷キャンパス)141教室(1F)+ズ
ーム配信
テーマ:『中央線沿線物語 ~「学園都市構想」100 年の光と影 』
講 師:嶋津 隆文 氏
(フォーラム自治研究(FJK)理事長 )
住みたい沿線で断トツ人気の中央線。中央線には魅力があり、魔力がある。それは100 年かけて醸成された特異な沿線文化の所以といわれる。しかし暮らしに光の部分があれば、陰の部分もある。今回は、FJKの嶋津さんから、日本の近現代史を体現する、この中央線の歴史を、立川・国立・国分寺エリアに焦点をあてて、ハード(都市構造)・ソフト(生活文化)の両面で辿るとともに、そこでおのずと生まれる街の陰影の内実当についてお話いただきました。
7月都市工塾
日 時:2022年7月25日(月)18時30分~
開催方法:ズーム会議方式によるフル・オンライン方式
テーマ:「国際文化交流と地域創生‐愛媛県内子町の試み」
講 師: 瀧口 勝行 氏
(日本シンクタンクアカデミー研究理事)
ユネスコが2002年に採択した「文化の多様性に関する世界宣言」では、文化的創造は、「伝統の上で成し遂げられ、他文化との接触より花開く」と謳っていますが、愛媛県内子町とドイツ、ローテンブルク市による地域交流も、各々の地域が有する「歴史的町並み」の保存と活用に関する知識交流が嚆矢でした。
1986年10月、内子町は、歴史的環境保全の先進的地域事例として、ドイツよりローテンブルク市長、国内から岐阜県高山市長を招き、内子歌舞伎座を会場として「内子シンポジウム」を開催し、以後、内子町とローテンブルク市は、歴史的町並など、双方の地域に根差す文化資源をベースに、一連の交流事業を推進した結果、年間2万人たらずであった内子町への観光入込客数は、2016年には124万人に達しました。近代化に取り残された小さな山村地域が、その残された歴史的遺産をベースに、遠くドイツの歴史的都市との交流を通じて、地域の再生を進めている状況は、新しい観光モデルとしても注目されるところです。今回は、この地域交流に当初より関わってこられた瀧口さんから、その具体的内容、意義等についてお話いただきました。
6月都市工塾
日 時:2022年6月27日(月)18時30分~
場 所:東京大学本郷キャンパス工学部14号館141教室(+ズーム
会議)
テーマ:「木質化を介して日本・欧州・東南アジアの関係を探る」
講 師:三宅理一 氏
(日本建築文化保存協会理事)
近年、先進国の間では「木質化」がSDGsに向けた社会のゴールとして広く共有され、目標達成へのロードマップが描かれています。国土面積の2/3を森林とする日本でもその動きが加速されていますが、「川上」「川中」「川下」といった木材の伐採から利用に到るサプライチェーンのそれぞれの場面で少なからぬ問題点を抱えています。中山間部における脆弱な森林経営に加えて、建築や都市における木材利用が未だ徹底せず、大規模再開発にあたっても木質化が当然のように語られる欧州に対してかなりの遅れをとっている現状です。
一方、木材のグローバルな流通メカニズムから見て、木質化の動きには国際連携が不可欠で、日欧の間では関係者や機関の間で相互理解と連携が進められ、WOODRISEといった専門フォーラムが立ち上げられていますが、木材資源の豊かな東南アジア諸国がそうした一連の動きから取り残されており、日本の協力が求められています。今回は、欧州・東南アジア・日本を横断した木質化をめぐる調査研究等を通じてこうした課題に取り組まれている三宅さんから、具体的な課題等をお話しいただきました。
5月都市工塾
日 時:2022年5月30日(月)18時30分~
テーマ:「自力から他力」へのもう一つのまちづくり
~公園を人がつながるまちの拠点に~」
講 師:辻 麻里子 氏
(宮前まち倶楽部代表)
都市の公共空間としての公園は貴重な憩いの空間であるとともに都市境環境の改善等多くの機能を有しています。今回は、大都市郊外のベッドタウンの典型的地域である川崎市宮前区において,公園等の公共空間で,住民主体のコミュニティプラットフォームによる「まちかどシェア」や「まちかどライブラリー」などの事業を展開し、公園の新たな活用方法を見出し,地域活動団体の活性化と社会的包摂力の醸成などを目指して活動されている、宮前まち倶楽部代表の辻さんから川崎市宮前区での10年間の実践報告をしていただきました。
4月都市工塾
日 時:2022年4月25日(月)18時30分~、
テーマ:「まちづくりとコミュニティ~JOHNSON TOWN~」
講 師: 磯野 達雄 氏 (磯野商会代表取締役社長)
渡辺 治 氏 (渡辺治建築都市設計事務所)
埼玉県入間市の元米軍基地に隣接する街区に、周囲の街並みとは一変した白い外壁の米軍ハウスや米軍ハウスを発展させた平成ハウスなどを基調とした個性的な街並みのJOHNSON TOWN(ジョンソンタウン)があります。枝を広げた樹木をよけながら歩く路地など魅力に満ちた空間では、住民同士の交流も活発で、誰かが寝込むと食事を届ける住民がいて、子供たちも、他の家に平気で入っていく。そのような住民が経営するお店や活動は外部の者を強く惹きつけ、今や、50を超えるカフェや小物店などが集い、年間40万人以上の来訪者が訪れるようになっています。
2017年の日本建築学会賞など多くの賞を受賞し、今年の「新建築」2月号でも特集された「ジョンソンタウン」について、その建築的な工夫や運営側の工夫、どのようにして文化的で仲がよいコミュニティが形成されたかなどについて、管理運営者の磯野さんと計画当初から携われている建築家の渡辺さんからお話を伺いました。
3月都市工塾
日 時:2022年3月28日(月)18時30分~
テーマ:「建築と都市と景観を考える
~東京圏域における高層建築の公共展望施設の公共性等について~」
講 師:若松 久男 氏
(若松久男建築研究所)
都市を一望できる高層建築物からの展望景観は、多くの人々の心をとらえる貴重な価値を有していますが、特に、自由な展望景観を誰にでも提供してくれる公共展望施設の価値は、改めて見直される必要があります。今回は、東京圏域における高層建築の公共展望施設に焦点をあてて、その空間特性などについて、建築家の若松さんにお話しいただきました。なお、同氏はこのテーマで昨年、東京大学大学院から博士号を授与されています。
2月都市工塾
日 時:2022年2月28日(月)18時30分~
テーマ:まちづくりのステイクホルダー&レジリエントパワーとしての近隣住民組織
・基調講演1:自治会・町内会等の現状とまちづくり活動との関係性
講 師:澤井 安勇 氏
(NPO法人都市工会代表理事)
・基調講演2:富岡・藤岡地域における地域づくりの現状と課題
講 師:熊倉 浩靖 氏
(高崎商科大学特任教授)
・コメンテーターからの発言、フロアとの意見交換
わが国最大の市民社会組織といわれる自治会・町内会・区などと呼ばれる近隣住民組織は、明治の大合併で1/5に減少した旧町村内で行政区として維持されてきた従来の自然村をはじめ様々な由来を持ちながら形成されてきたもので、現在においても各地域のまちづくり活動に大きな影響力を有する存在となっています。そのような近隣住民組織の現状とまちづくり活動との関係性及び群馬県富岡・藤岡地域で小学校区・公民館区単位で進められている地域づくり活動と近隣住民組織である区・地区との関係、さらには行政の支援状況などについて報告いただき、参加者の皆さんと意見交換を行いました。
1月都市工塾
日 時:2022年1月24日(月)18時30分~
テーマ:「マルセイユ・ユーロメディテラネ 文化化と享楽の斜陽港湾都市再生」
講 師:鳥海 基樹 氏
(東京都立大学都市環境学部教授)
フランス最大の港湾都市であるマルセイユは、ヴァレンシアやジェノヴァに遅れを取り、衰退が顕著であったにもかかわらず、市政の混乱で再建策を打ち出せずにいたが、それに業を煮やした国家が能吏を送り込み、1995年以降、欧州最大級の都市開発・経済発展プロジェクトといわれるユーロメディテラネ構想が推進されることとなった。今回は、2015年12月の都市工塾でマルセイユの都市開発についてお話いただいた都立大学教授の鳥海さんから、改めて、文化を主軸に地政学的に地中海に回帰することを目指すといわれるユーロメディテラネ構想をテーマに、都市計画を文化的に変化させる「文化化」と享楽による斜陽港湾都市再生についてお話いただきました。
2021年
12月
テーマ「SDGs未来都市・横浜におけるSDGsデザインとまちづくり推進講 師:麻生 智嗣 氏(合同会社サスティナブル・デザイン都市戦略研究所 コーディネーター)
横浜市は、これまで環境モデル都市、環境未来都市などのプロジェクトに取り組んできたが、 SDGs(持続可能な開発目標)への注目が高まるなか、2018年に「SDGs未来都市」の選定を受け、環境・経済・社会的課題の統合的解決を目指して、社会・環境・ガバナンス・地域の4分野の認証制度を設けるとともに、民間との協働中間支援組織「ヨコハマSDGsデザインセンター」を核として、持続可能な木のストローの製作・普及拡大(環境分野)、中小企業のSDGs認証・金融支援(経済分野)、郊外住宅団地におけるモビリティ実証(社会分野)など多様な先駆的プロジェクトを実施・展開してきた。
今回は、同センターの実務トップの総合コーディネーターを務める麻生さんから、SDGsデザインに基づくまちづくり推進のポイントや、特徴的なプロジェクトである若葉台団地のまちづくりなどについてお話いただいた。
11月
日 時:11月29日(月)18時30分~
テーマ「LRTとTODー宇都宮の新しいまちづくり」
講 師: 古池 弘隆 氏
(宇都宮共和大学特任教授)
人口50万人超を擁する北関東最大の中核都市栃木県宇都宮市は、市民の「生活の質の向上」を基本として、人・もの・情報が活発に交流する広域的な拠点性を高めて持続可能な発展を図る、「ネットワーク型コンパクトシティ(連携・集約型都市)」のまちづくりを進めていますが、それを支える公共交通ネットワークの要として、日本で初めての新設のLRTの工事が進行中です。また、JR宇都宮駅の東口にはコンベンションセンターを中心にホテルや高度医療施設、商業業務施設などの建設が進められています。
今回は、四半世紀以上前からこれらの構想や計画にかかわってこられた宇都宮共和大学教授の古池さんから、紆余曲折を経て実現に至ったこれまでの経緯と今後の展望についてお話いただきます。
10月
東京大学ホームカミングデイ参加プログラム
・日 時:10月16日午前10時~12時
・基本テーマ:「コロナ後の“都市と芸術文化”の動向を考える」
・基調講演1:「CODID-19と都市における創造的産業・職業」
講 師:藤井康幸氏(静岡文化芸術大学文化政策学科教授)
基調講演2:「文化的コモンズをつくるーパンデミック後の共創・共生社会のための文化政策を考える」
講 師:藤野一夫氏(兵庫県立芸術文化観光専門職大学副学長)
昨年来、世界各地の都市では、新型コロナウイルス感染症との一進一退の攻防が繰り広げられてきており、各都市においては、コロナ後のニューノーマルな都市と社会・経済の構築に向けた動き(OECDによれば、包摂的でグリーンでスマートな都市を目指す新たな都市パラダイムへの転換)が活発化しています。こうした流れの中で、文化・産業等における創造性を生かして市民生活の向上を目指す「創造都市」の動向や都市の基本機能の中で、コロナ禍により最も深刻な影響を受けた部門ともいわれる芸術・文化の今後の展望について講演いただき、コメンテーター、フロアを交え自由討論を行い、ニューノーマル回帰後の「都市と芸術文化」のイメージをさぐりました。
9月
日 時:9月27日(月)18時30分~20時15分
テーマ:「中世社寺建築の美」
講 師:吉川 輔良 氏
((株)吉匠建築工藝棟梁、日本伝統建築技術保存会理事)
2020年12月、宮大工など「伝統建築工匠の技 木造建築を受け継ぐための伝統技術」17分野のユネスコ無形文化遺産への登録が決定され、今、日本の伝統的木造建築技術への関心が静かに高まっています。今回は、多くの社寺建築、古民家等の新築・修復を手掛けてこられ、また2013年11月の都市工塾で伝統的な宮大工の技を実地にご披露いただいて好評を博した吉匠建築工藝の吉川さんから、改めて、中世社寺建築の魅力、修復等の苦労話などについてお話いただきました。
7月
日 時:2021年7月26日(月)18時30分から
テーマ:「まちづくりとエネルギー施策の融合」を目指して見えてきた課題
講 師:中丸 正 氏
(一般社団法人エコまちフォーラム 専務理事)
2012年の「都市の低炭素化の促進に関する法律」、いわゆる「エコまち法」の施行を契機に、全国各地で低炭素型都市づくりなど、都市政策としてエネルギー・環境対策に取り組む事例が多くみられるようになっています。こうした中、外部の専門知識・ノウハウを活用したエコなまちづくりの実現や公・民のオープンなパートナーシップの構築を目指して、地域における公的政策の提案などに取り組まれている一般社団法人エコまちフォーラムの中丸さんから、数多くの自治体とのこれまでの協働を通じて見えてきた諸課題・事例等の紹介とその解決の方向性に関する提言などについてお話いただきました。
6月
日 時:6月28日(月)18時30分~20時
テーマ:「前橋アーバンデザインとMDC(前橋デザインコミッション)の取り組み」
講 師: 日下田 伸 氏
(都市再生推進法人(一社)前橋デザインコミッション 企画局長)
全国の地方都市では夫々多様なまちづくり活動が展開されていますが、その中で、群馬県前橋市では、2019年に、民間主体のまちづくり推進指針である「前橋市アーバンデザイン」を作成するとともに、民間まちづくり法人として「一般社団法人前橋デザインコミッション(MDC)」を設立し、中心市街地において様々な民間主体のアクションを展開してきました。これらの活動が評価されて、昨年、国交省主催の第2回先進的街づくり大賞において、最高賞である「先進的まちづくり大賞・国土交通大臣賞」を市・MDCがまちを代表して受賞するなど、通常の行政計画とは異なるビジョナリーな官民連携のまちづくり推進の手法が、今広く注目を集めています。今回は、MDCの日下田さんから、こうした前橋方式のまちづくりの考え方とその具体的内容についてお話いただきます。
5月
日 時:2021年5月24日(月)18時30分~
テーマ:「村民わずか540人!関東で一番小さい村からの挑戦! 講 師: 小村 幸司 氏
(NPO法人小さな村総合研究所代表理事)
「G7サミット」ならぬ「g7サミット」があることをご存じですか
?北海道、東北、関東、近畿、中国、四国、九州とそれぞれの地域で一番人口の少ない7つの村が集い、情報交換を行う「小さな村g7サミット」。仕掛け人は、関東で一番小さい村、山梨県丹波山村を拠点に活動するNPO法人小さな村総合研究所代表の小村さんで、「小さな村だからこそできること」を合言葉に「小さなこと」を逆手にとって様々な形で情報発信・都市との交流活動を展開されており、その様子は先月4月5日のNHK「おはよう日本」でも詳しく報道されています。今回は、
小村さんから、丹波山村への移住からg7サミットの誕生、そしてその後の幅広い活動の考え方などをお話いただきました。
4月
日 時:2021年4月26日(月)18時30分~ 20時
テーマ:「地方中小都市におけるコミュニティ振興の現状とあり方」
~小学校区や公民館区を主要な単位として~
講 師:熊倉浩靖 氏
(高崎商科大学特任教授)
中嶋一雄 氏
(群馬県富岡市元総務部長)
人口減少・少子高齢化が加速するなか、地方中小市町村の住民は、明治合併時の旧町村から続く基本単位を壊すことなく暮らし続けてきた地域を見直し、共助を基本とした振興策を模索するとともに、地域という言葉で定義されるものが何かを再構築しつつあります。
今回は、こうした地域コミュニティの動向について、風景や歴史・人物などに代表される心の拠り所、公民館や公会堂の複合拠点化の動きが進んでいる物理的拠り所、そして地域の経済循環という3つの視点から、群馬県富岡市のケースを中心として、高崎商科大学の熊倉さんと富岡市の中島さん、そして群馬県藤岡市、沼田市の皆さんにお話しいただきました。
3月
日時:2021年3月29日(月)18時30分~
テーマ:「東日本大震災と東電原発事故災害から10年が過ぎて
~コロナ禍に苦しむ我々は何を学ぶか?~」
講 師: 尾田 栄章 氏
(水・行基・解工師/NPO法人渋谷川ルネッサンス代表)
賀澤 正 氏
(NPO法人浅見川ゆめ会議事務局長)
巨大津波と東京電力福島第一原発事故という未曽有の複合災害から10年を迎えた現在、私たちは今また新型コロナウイルスによるパンデミックに襲われています。今回は、コロナ禍に苦しむ現状を踏まえて、東日本大震災・原発事故後の10年を振り返り、改めて、これからの日本の在り方を考え直してみたいと思います。講師は、2013年4月から3年余り福島県双葉郡広野町役場に福島県任期付き職員として勤務された尾田さんと災害発生時広野町建設課長として災害に対応された賀澤さんのお二人で、お二人には、被災地の現在の課題、今回のコロナ禍と東日本大震災(原発事故)との比較、さらには日本の行政システムやマスメディア・ジャーナリズムの在り方等について語っていただきました。
2月
日 時:2021 年 2 月 22 日(月)18 時 30 分~ (ズーム会議形式) テーマ:ポストコロナ時代の芸術文化活動の在り方を考える
―デジタル空間とリアル空間のはざまで―
基調報告1:コロナ下での劇場再開の手法と今後の課題
-兵庫県立芸術文化センターの事例から― (30 分程度)
講 師: 藤村 順一 氏 (兵庫県立芸術文化センター副館長)
基調報告2:感染症と地域の芸術文化(仮題)
ー公共劇場の明日を考えるー
講 師:石田 義明 氏
(公益財団法人東松山文化まちづくり公社理事長)
コメント1(5分程度) 井上 建夫 氏
(守山市民ホール総合プロデューサー)
コメント2(5分程度) 田代 雅春 氏
(新潟市秋葉区文化会館館長・総監督)
コメント3(5分程度) 鈴木 和幸 氏
(東松山市民文化センター制作チーフ)
人々が集い、その心を結びつける広場として機能してきた地域の劇場・ホールは、新型コロナウイルスの蔓延により、今その在り方について大きな岐路を迎えつつあります。ウイルス対策として推奨されるニュー・ノーマルの考え方から、人の集まる機会・場は大きく抑制される状況が定着しつつあるからです。その対応策として急速に普及・拡大した手法がデジタル化で、、舞台芸術や展覧会などをデジタルな空間の中で鑑賞する機会の提供が急増しています。その一方で、劇場は“舞台と客席が一体となって共有する一期一会の空間”と言われるように、本物の芸術文化を五感で感じられるリアルな空間としての意義もここにきて再評価され始めています。今回は、デジタル空間とリアル空間のはざまで苦労されている舞台芸術関係者の報告を中心に、この問題を考えてみました。(都市工会「都市と芸術 研究会」の公開パネルをも兼ねて実施。)
1月
日 時:2021年1月25日(月)18時30分~20時15分
テーマ:「公共空間から街を変える -ヤン・ゲールに学ぶ-」
講 師:北原理雄 氏
(千葉大学名誉教授)
コペンハーゲンの歩行者空間・ストロイエの研究やニューヨーク・タイムズスクエアのデザインなどで有名なデンマークの建築家・都市計画家ヤン・ゲールは、1960年代から、公共空間における人間行動を世界に先駆けて体系的に調査・分析し、実践に取り入れてきました。彼の著作、そして各国での講義・講演・調査・提案は、多くの研究者・計画者・市民に大きな影響を与え、公共空間利活用の新しい流れをつくりだしています。今回は、『人間の街/公共空間のデザイン』の著者・北原さんに、ヤン・ゲールの軌跡を中心に、都市の公共空間について語っていただきました。
2020年
12月
日 時:2020年12月21日(月)18時30分~20時頃
テーマ:『まちづくりとガバナンス
~近隣住民組織等を中心に~』
課題提起: 澤井 安勇 氏
(NPO法人都市工会 代表理事)
コメンテーター: 小山 弘美 氏
(関東学院大学准教授)
高村 和哉 氏
(中野区広報課長)
麻生 智嗣 氏
((株)エックス都市研究所主任研究員)
地球規模の気候変動、エネルギー・環境問題、大規模災害リスク、人口減少の加速化と超高齢化、そして新型ウイルスによるパンデミックの発生、さらにはIoT、AI等ICT技術の急速な革新・普及など、今、各地域社会における「まちづくり」をめぐる全体状況は大きく動いています。こうした情勢の中で、市民の満足度を高める「まちづくり」を実現させるガバナンスはどのようにあるべきか、というテーマについて、公開研究会においては、コミュニティ・ガバナンス、近隣住民組織、ソーシャル・キャピタルなどの視点から活発な議論が行われました。。
11月
日 時:11月27日(金)18時30分から1時間程度
テーマ:「スリバチ地形から解き明かす江戸・東京の秘密」
講 師:皆川 典久 氏
(東京スリバチ学会会長、法政大学非常勤講師)
東京オリンピックの開催を契機に、改めて東京の街を探索する活動も盛んになっているようです。
今回は、東京の都市風景に陰影と趣を与えている東京都心部のスリバチ地形(台地に低地が谷状に切れ込み、三方向が斜面に囲まれたような形状の地形)の観察・記録を目的に十数年来活動を続けてこられた「東京スリバチ学会」の皆川さんから、東京の地形的特色の紹介をしていただき、その地形を活かし発展を続ける東京ならではの都市形成についても解説いただきました。
10月
(オンライン会議形式で開催)
日 時:10月29日(木)18時30分~19時30分頃
テーマ:「SHIBUYAの未来は こう変わる!?
~エンタテイメントシティSHIBUYAの実現を目指して~」
講 師:奥木卓司 氏
(東急株式会社渋谷開発事業部 開発推進グループ企画開発担当)
1日の乗降客数が約330万人の巨大ターミナル渋谷駅周辺では、渋谷ヒカリエ、渋谷ストリームに続く昨年末のスクランブルスクエアの開業、そして今年に入ってからの銀座線渋谷駅ホームの移設など、ここ数年来、様々な大規模開発が目まぐるしく進行中です。
今回は、こうした渋谷の都市開発を幅広く手掛けておられる東急株式会社の奥木さんから、東急が進めている渋谷開発の現状、渋谷のまちの変化と今後の展開などについてお話をしていただきました。
9月
(オンライン会議形式で開催)
日 時:2020年9月28日(月)18時30分~19時50分
テーマ:「中小建物の百年建築」
講 師:武藤 清 氏
(NPO環境持続建築 副理事長)
樋口 佳樹 氏
(日本工業大学生活環境デザイン科准教授)
自然にやさしく永く営みを続けるための建築の提案である「環境持続建築」という言葉をご存じでしょうか。
住宅やビルの建築では30年から50年で建て替えるスクラップ&ビルド方式が一般的ですが、今回は、 中古ビルの建物を診断・改修して一生懸命メンテをやってできるだけ寿命を長く伸ばし、建物の価値を高めていく建築方法を提案し、地球環境の保全とまちづくりに寄与しようという「環境持続建築」の活動に取り組まれている
お二人から、中小建物の百年建築」と題して、環境持続建築の理念そして具体的な事例として、築古ビル4件 (オフィスビル2、マンション2)の改修事例、改修後の収支などについてお話していただきました。
3月
日 時:3月23日(月)18時30分〜
場 所:東京大学工学部14号館2階144教室(2階に上がってすぐ右側の教室)
テーマ:「三陸のまちの将来像を考える〜唐丹小白浜の震災復興プロジェクト〜」
講師:神田 順 氏(東京大学名誉教授/日本大学特任教授)
来年には復興期間の10年が到来する東北大震災ですが、今、各被災地域の復興まちづくりプロジェクトの動向に注目が集まっています。
今回は、岩手県釜石市の漁村集落、唐丹小白浜(とうにこじらはま)地区に、発災直後から被害調査等に入られ、以後同地区の復興まち
づくりに貢献されてこられた神田さんに、唐丹小白浜まちづくりセンターの設立など、これまでの取り組みの成果・課題等を振り返って
いただき、さらに豊かな水産資源に恵まれながらも、人口減少を迎える三陸のまちの将来像について語っていただきました。
2月 学務のため休講
1月
日 時:1月20日(月)18時30分~19時45分頃
場 所:東京大学本郷キャンパス工学部14号館1階141教室
テーマ:「多摩から江戸・東京をつなぐ水循環の保全と再生」
講 師:山田 正 氏
(中央大学大学院理工学研究科教授)
2020年の五輪開催を契機に、改めて首都東京の都市環境について関心が高まっていますが、この大都市を支える水循環システムもその一つです。かつて江戸は、世界一の水循環システムを誇った水文化都市を形成していましたが、それを支えたのは武蔵野台地に刻まれた玉川上水・分水網でした。しかし、この半世紀にその姿は大きく変貌し、多くの都市河川において、水質汚濁による悪臭の発生、景観の悪化などが進行し、人が水と親しむことが困難な状況となっています。今回は、水循環の研究をされている山田さんに、玉川上水・分水嶺、江戸城外濠などの現状とそれらに対する研究成果の一部についてお話いただきました。
2019年
12月
日 時:12月16日18時30分~
場 所:東京大学本郷キャンパス工学部14号館1階 141教室
テーマ:「東京駅前常盤橋プロジェクトが目指す街づくり」
講 師: 安達 晋(すすむ) 氏
(三菱地所株式会社 常盤橋開発部
開発企画ユニット ユニットリーダー)
今月はじめ、渋谷の超高層ビルのオープンが大きな話題となりましたが、来年のオリンピック・パラリンピックをテコに、今、都内各地で巨大都市再生プロジェクトが一斉に動き始めています。東京の表玄関・東京駅周辺地区においても、これまで丸ビルを皮切りに丸の内から大手町エリアで超高層ビルの建て替えが続いてきましたが、現在特に注目されているのが、東京駅の北側で日本橋川に面し、かつて江戸城の表玄関へつづく交通の要であった常盤橋地区。今回のテーマは、この地区に3.1haという広大な敷地を誇る新街区を形成し、高さ390m のタワーと7,000 ㎡ の広場を有する東京の新たなシンボルを生み出そうという東京駅常盤橋プロジェクトについてです。
「眺めが変わる。世界が広がる。」をキャッチ・コピーに進められている同プロジェクトの計画概要、手法、今後の街づくりの方向などについて三菱地所の安達さんに語っていただきました。
11月
日時:2019年11月25日(月)18時30分〜
場所:東京大学工学部14号館1階141教室
テーマ:「ニューヨーク市の1990年代の治安政策」−2人の警察委員長
の戦略−
講師:原田 敬美 氏
(株)SEC計画事務所 代表取締役、明治大学公共政策大学院講
師
“安全・安心な街づくり”は都市政策の必須事項の一つですが、世界都市ニューヨーク市は、かつて1970年代から1990年代にかけて治安の悪い危険な街のレッテルが貼られていましたが、その後市当局の治安政策の強化により急速に改善され、現在ではアメリカ大都市の中でもトップレベルの安全な街になっています。今回は、ニューヨーク市はじめ米国での活動経験が豊富な建築家で元港区長の原田さんから、このニューヨーク市の治安改善に貢献した2人の警察委員長(公安委員長)が行った治安政策の特徴等について解説いただくとともに、安全で快適な環境創出のための都市開発の事例などについてお話しいただきました。
10月
日時:2019年10月19日(土) 午前10時30分〜12時30分頃
場 所:東京大学本郷キャンパス工学部14号館2階144教室
テーマ:「コミュニティ・ガバナンスを考える」
講演1:「コミュニティ・ガバナンスにおける市民活動・NPOの機能」
講 師:小山 弘美 氏(関東学院大学准教授)
講演2 :「コミュニティ・ガバナンスの諸課題」
講 師:澤井 安勇 氏(NPO法人都市工会代表)
わが国においては、人口減少の顕在化、高齢人口のピーク等の社会変化に対応した地域コミュニティの強化や新たな形成が課題となっています。わが国のコミュニティ・ガバナンスの主要な担い手であった自治会・町内会の在り方が問われる中で、近年増加しつつある多様な市民活動・組織が重要な役割を担っている、という指摘もあります。課題提起の講演とともに、地域コミュニティのグッド・ガバナンスを確保するための方向性を議論しました。
9月
・日時:9月30日(月)18時30分~
・場所:東京大学本郷キャンパス工学部14号館2階 145教室
・テーマ:「東京の公園政策とこれからの公園緑地政策」
・講師: 町田
誠 氏
(公益財団法人東京都公園協会専門アドバイザー)
都市公園をはじめとする緑とオープンスペースは、都市環境の改善、都市の防災性の向上、良好な都市環境の提供、都市の安全性の向上、市民の活動の場・憩いの場の提供等を通じて豊かな地域づくりや地域活性化に不可欠なものとされています。(国交省HPより)
東京には、皇居に例をとるまでもなく、江戸の資産を継承した大規模な緑地が数多く残されていますが、2020年オリンピック開催後の東京のまちづくりを考えるうえでも、東京の公園緑地政策の動向は大いに気になるところです。
今回は、東京都公園協会の町田さんに日本の公園緑地政策をリードしてきた東京の公園緑地政策の過去・現在・未来について、ParkPFIの創設等を定めた2017年の都市公園法改正の解説なども含め、お話しいただきました。
8月
休講
7月
・日時:7月22日(月)18時30分~
・場所:工学部14号館141教室
・テーマ:「まちを開く/オープン・シティ・プログラムとは何か」
・講師:岡村 祐 氏
(首都大学東京都市環境学部 准教授)
昨今、建築、庭、工場、スタジオ、文化遺産等、地域資源を一斉公開する試みが広がっています。
「オープン・シティ・プログラム」と呼ばれるこの試みは、オーナー・ボランティア・参加者・行政など多様な主体が関わることで、情報発信や集客など観光効果をはじめ、仲間作りやコミュニティ形成につながるまちづくりの手法です。
まちをひらく取組とは何か、なぜ、まちをひらくのか、まちづくりの技術としてのオープン・シティ・プログラムの構想、企画、運営について、内外の事例を交え、オープン・シティ研究会の岡村祐氏(首都大学東京)に語っていただきました。
6月
・日時:6月24日(月)18時30分~
・テーマ:「医療が支える地域、地域が支える医療のはなし」
~コミュニティをネットワークする地域医療ハブ~
・講師:津嶋 功 氏
(株式会社岡田新一設計事務所 代表取締役社長)
平成23年の東日本大震災の大津波により甚大な被害を被った宮城県南三陸町に平成27年11月 、「南三陸病院・総合ケアセンター南三陸」が新しいまちづくりのシンボルとして完成しました。病院とケアセンターの間には医療と介護の手続きが同時にできるよう「みなさん通り」というエントランスロビーもあり、現在では、新しいまちの中の生活空間の一部になっています。
このプロジェクトについてのお話しのほか、重い病気と闘う子どもたちとその家族に、笑顔と思い出を創り、夢を育み護る場所を創るこどもホスピスプロジェクトについてのお話しを通じて、医療福祉施設と地域コミュニティの関係について、岡田新一設計事務所代表の津嶋さんから語っていただきました。
5月
・日時:5月27日(月)18時30分から
・テーマ:「文化芸術とまちづくり」
・講師: 羽生 雄一郎 氏
(一般財団法人地域創造 事務局長)
“文化や芸術が生み出す過程での『創造力』こそが、都市や地域をよみがえらせる原動力である”とは、『The Creative City』の著者C.ランドリーの言ですが、近年わが国においても文化芸術活動を地域おこしやまちづくりの推進力とする事例が数多くみられるようになってきました。また、そうした動きを支える組織体制・立法の整備も平成になってから目立つようになっています。
今回は、芸術振興による創造性豊かな地域づくりに貢献するため平成6年に設立され、全国各地域で地方自治体等の文化芸術活動を支援されている「地域創造」の羽生さんから、その活動の内容・意義、近年の文化芸術に関する立法の動き、さらには実際の地域事例などについてお話しいただきました。
4月
・日時:4月22日(月)18時30分から
・テーマ:「創造都市の動向について」
・講師:藤井 康幸 氏
(静岡文化芸術大学文化政策学部教授)
グローバリゼーションと知識情報経済化が急速に進展した21世紀初頭に、画一化・グローバル化に対するアンチテーゼとして欧米を中心に多様な創造都市群(Creative Cities)が誕生しました。地域の文化の見直しと人々の生活の質の向上、加えて、新たな経済の牽引役の期待を担って登場した創造都市ですが、近年様々な視点からの評価が行われています。
今回は、静岡文化芸術大学の藤井さんに、その概念・要点にかかる諸論及びユネスコの創造都市ネットワークに参加して創造都市づくりに取り組む国内外の都市の分析等を通じて、今日の創造都市の到達点と今後の展望についてお話しいただきました。
3月
・日時:2019年3月18日(月)18時30分から
・テーマ:「ローカルライフスタイルの構築」
・講師: 岡野 宏昭 氏
(元長岡大学教授)
首都圏への人口・経済の集中が続く中で、地方は疲弊し、地域間格差は拡がるばかりです。
2014年に発表された増田レポート(日本創生会議・人口問題研究会レポート)では、「2040年までに、全国1,741市町村のうち、896自治体(51.5%)が消滅可能性の危機にある」と分析しています。地方の努力にもかかわらず、地方の衰退を止めることは難しい。だからといって地方が衰退していい訳がありません。政府は地方創生を政策のキーワードに掲げていますが、これまでのような経済成長をベースにした地域振興策では、地方にゆたかさをもたらすことは難しいことを、国民の多くが感じています。
ゆたかな地方を作り上げるには新しいパラダイムが必要です。そのパラダイムが「ローカルライフスタイル」です。 「ローカルライフスタイル」は、「結果(経済)」 をゆたかさの基準とするのではなく、「過程(時間)」をゆたかさの基準とする生活スタイルのことです。
人生とは時間であり、その時間を充実して生きることこそがゆたかさなのです。そうした視点から見ると地方には、まだゆたかさが溢れています。今回は、永年地域経済論を専攻されてきた岡野さんから、地方のゆたかさとは何かについて考察していただくとともに、氏の持論である「ローカルライフスタイル」、すなわち時間充実によるゆたかな地域社会のあり方について、それを実現するための地域経済はどうあるべきかを含め、お話しいただきました。
2月(休講)
1月
・日時:2019年1月21日(月)18時30分から20時
・テーマ:「関西活性化に向けての動き~スマートシティ構想を中心に
して」
・講師: 信時 正人 氏
(エックス都市研究所理事、神戸大学客員教授)
東京首都圏への人口・経済等の集中が進行する中で、関西圏の活性化、経済再生が大きな課題となっていますが、近年、関西の大学やその関連組織が産・学・官を広く巻き込み、先端産業の育成や文化・観光産業の振興、魅力ある都市づくりなど、幅広い領域で関西再生につながる新しいプロジェクト構想を推進しつつあり、こうした動きは2025年大阪万博の決定により、今後ますます加速されると思います。
これらの動きの中から今回は、関西圏に生活の拠点を移し、東西に幅広いまちづくり活動を展開されている信時氏から、神戸大学で構想されているスマートシティ関係の仕組についての状況報告を中心に、その関連で、まちづくりを推進する公民学連携の組織であるアーバンデザインセンター(UDC)神戸の活動について、さらに日本イベント学会ベースで動き始めたICOMOS(国際記念物遺跡会議)国際大会の関西誘致の話題などについてお話していただきました。
2018年
12月
日 時:12月17日(月)18時30分~19時55分
テーマ:「フランスのワインスケープ」
講師: 鳥海 基樹 氏
(首都大学東京準教授)
ワインスケープとは、一義的には、ワイン用ブドウ畑、農道や休憩小屋そして醸造所や集落などが形成する景観を指しますが、サン・テミリオン、シャンパーニュそしてブルゴーニュと続く銘醸地世界遺産の誕生は、その概念を産業遺産や鉄道遺産にまで拡張し、さらに銘醸地を探訪するワイン観光の進展や目の肥えたクライアントの審美眼に対応して、それはアヴァン・ギャルドなワイナリーやブティックにまで展開されています。つまるところ、フランスでは、ワインスケープが味覚を超えた価値を創造している、と言っても過言ではありません。
今回は、このフランス銘醸地のワインスケープを題材に、日本の今後の都市計画、文化財保護、観光・農業政策さらには地方自治への示唆について、首都大学東京の鳥海さんにお話しいただきました。
11月
日時:11月26日(月)18時30分~19時50分
・テーマ:「国宝 迎賓館赤坂離宮について」
・講師: 永瀬 一郎 氏
(都市情報コミュニケーション研究所)
港区元赤坂の迎賓館赤坂離宮は、明治42年に東宮御所として建設された、日本で唯一のネオ・バロック様式による宮殿建築で、明治期の日本の建築・美術・工芸界の総力を結集した本格的な近代洋風建築の到達点を示している建築物です。本施設が建設された時期は、わが国の皇室や政治・外交体制が整備されていく過程で産業やインフラも急速に進化していく時期でもあり、いわば、過渡期の姿がひそんでいる建物とも言えます。第2次世界大戦後、国の迎賓施設へと大規模な改修を施し、和風別館の新設と合わせて昭和49年に現在の迎賓館となりました。その後、平成21年に行われた大規模改修工事の後には、国宝に指定され、現在は、国宝=歴史的建造物であるとともに、日本政府の現役の接遇施設という2つの顔を持っています。今回は、本施設のボランティア説明員を務めておられる永瀬一郎氏から、TV番組や紹介記事、政府ホームページなどではあまり伝わってこない本施設の本当の姿についてお話ししていただきました。
10月
日時:10月20日(土)14時30分~16時30分頃
場所:東京大学工学部14号館都市工学科141教室
基本テーマ:「地域劇場の経営(新旧アートマネージャーからの提言)」
講演1: 「夏はオペラへ!にしきた劇場歳時記」
講師:宮地 俊江 氏
(兵庫県立芸術文化センター 事業部制作担当課副課長)
講演2 : 「 創造劇/新版二日月 地域劇場の新たな取り組み」
講師:谷沢 理香 氏
( 新潟市北区文化会館事業部企画制作担当 )
現在約1,500を数える全国の公共ホールですが、その経営状況には大きなバラツキがあることが指摘されています。行政・市民の参加と協力を得て、地域の文化インフラとしてまちづくりや地域活性化の核として活動しているホールがある一方、様々な課題を抱えて低迷するホールも数多くあるのが実態です。
2012年に制定された「劇場法」の前文では、劇場・音楽堂等を「文化芸術を継承し、創造し、及び発信する場であり、また、人々が集い、人々に感動と希望をもたらし、人々の創造性を育み、人々が共に生きる絆を形成するための地域の文化拠点である」と書かれています。各地域の公共ホールが、法律が想定する地域の文化拠点として発展するための課題は何か、またどのような方向性を目指すべきか。
今回は、地域の公共ホールが真の地域劇場(音楽堂)としての地位を確立し、地域の文化拠点として発展するための諸課題等について、現在活躍中のお二人のアートマネージャーに現場からの報告・課題提起を行っていただき、ベテランの公共ホール関係者から関連コメントをいただき、その後フロアとの質疑を行った。
9月
日時:9月10日(月)18時~20時
基本テーマ:「都市コミュニティの形成とソーシャル・キャピタル」
講演1:「スマート街区コミュニティとソーシャル・キャピタル」
講師: 永冨 聡 氏
(都市工会「ソーシャル・キャピタル活用政策研究会」副主査)
講演2:「市街地活性化とソーシャル・キャピタル」
講師: 麻生 智嗣 氏
((株)エックス都市研究所主任研究員)
ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)の醸成・活用が都市コミュニティの形成に様々な形で影響を有することは、近年の諸調査・研究によっても明らかにされつつありますが、今回は、「都市コミュニティの形成とソーシャル・キャピタル」を基本テーマとして、講演1では、ゼロ・カーボンを目指したスマートライフ推進の模索がスタートしている北九州市の住宅コミュニティの事例を中心に永冨氏に、また講演2では、低・未利用ストックの利活用に向けて取組が始まった宇都宮市の中心市街地地区の事例を中心に麻生氏に、其々ソーシャル・キャピタル政策との関連を踏まえてお話ししていただき、その後塾の運営をサポートするNPO法人都市工会「ソーシャル・キャピタル活用政策研究会」の方々からコメントをいただき、ついでフロアからの意見・質問を求めました。
7月
日時:7月23日(月)18:30~20:00
・テーマ:『日比谷の街づくり~「東京ミッドタウン日比谷」の開発を
通じて~』
・講師: 太田 幸一 氏
(三井不動産株式会社 日比谷街づくり推進部事業グループ統
括)
都市工塾では、これまで東京駅周辺地区、渋谷地区など東京都心開発の状況について 順次取り上げてきましたが、今回は、今年3月に地上35階、地下4階、延床面積約189,000平方メートルのオフィス・商業・ビジネス連携拠点などから構成される「東京ミッドタウン日比谷」オープンで活気づく日比谷地区の開発・整備をテーマに取り上げました。
講師は、ミクストユース型街づくりのブランド「東京ミッドタウン」プロジェクトを担当する三井不動産(株)の太田さん(都市工34期)で、固有の歴史と雰囲気を持つ日比谷の街づくりについて、日比谷地区の歴史、開発経緯、パブリックスペースの創出、エリアマネジメントそして今後の展望といった視点からお話しを伺いました。
6月
日時:6月25日(月)18:30~19:50
テーマ:「美と自由の都市デザイン」
講師:鈴木崇英 氏(COPER研究所代表)
都市工塾の活動のバックグラウンドとなっている東京大学都市工学科が設立されたのが1962年、そして第1期の卒業生が巣立ったのが1966年ですが、その3年後の1969年に湯島のフトン屋の2階、7坪足らずの小部屋で丹下研究室の1期生を中心とした7人のサムライによって、日本初の都市デザイ専門のベンチャー・ビジネスといわれたUG都市設計が起業されました。今回は、その1期生の中心となってUG都市設計を設立し、〈美と自由〉を追求した都市デザイン活動を続けてこられた鈴木さんに、UG都市設計時代の都市デザインの要諦、具体的開発事例についてお話しいただき、さらに、その後、建築確認検査・住宅性能評価の専門機関である日本ERI(株)を立ち上げた経緯、さらに現在のアートの街づくりを追求するCOPER研究所の活動などUG以後の活動についても興味深いお話しをいただきました。
5月
日時:5月28日(月)18:30~20:00
テーマ:「都市再生~これまでの20年とこれからの20年~」
講師:小澤 一郎 氏
((公財)都市づくりパブリックデザインセンター顧問)
1990年代はじめに起きたバブル経済の崩壊により不況に突入した日本経済ですが、市街地内では虫食い的に残された低未利用地対策が課題となり、このため土地有効利用事業により、需要喚起を図る緊急経済対策が実施されました。さらに、日米間の貿易不均衡問題に端を発する規制緩和・構造改革の推進が緊急の課題となり、大店立地法の制定や中心市街地対策(旧中活法)等が20年前の1998年に制定されました。
土地の有効利用や規制改革による需要喚起はその後も経済対策の柱として重要視され、2001年には内閣官房に都市再生本部が設置されて、大都市を中心にした都市再生プロジェクトの推進が図られ、その後13次にわたる都市再生プロジェクトの決定が行われました。また、地方都市においても中心市街地対策の取組が全国的に展開されました。
一方、これからの20年を考えると、地球温暖化対策やエネルギー対策、さらには、自動運転モビリティの普及など、いずれも都市の構造的変革をもたらす課題への対応が必要とされています。
今回は、一貫して都市づくり・街づくりの専門家として活動されてきた小澤さん(都市工3回生)に、これまでの20年を振り返り、そしてこれからの20年を展望してお話しいただきました。
4月
日時:4月23日(月)18:30~20:00
・テーマ:「都市工塾開講20年の回顧と展望」
・講師: 澤井 安勇 氏
(都市工塾実行委員会事務局長)
バブル崩壊後の不況、アジア通貨危機などにより山一証券、長銀など大手金融機関の破綻が相次いだ金融危機の最中に、「危機の構図と再生への視角」をテーマとした第1回の講義でスタートした「都市工塾」も今年で開講20年、4月の講義で190回目を迎えることとなりました。
この20年の日本社会を振り返ると、長期デフレが続く中で、リーマンショック、政権交代、東北大震災などの重大事変が次々と生じ、人口が長期減少局面に入る中で、社会の分断・格差の進行も顕著となるなど、総じて困難な状況が続いてきたように思えます。
今回は、参加者の皆さんと共に都市工塾の20年を振り返りながら、ドラスティックな社会変容が進行する中での日本社会の今後の動向を占いながら、ポジティブな市民的ネットワークの輪を広げつつ、都市発の社会イノベーションの波を伝えていく塾活動の意義などについて語っていただきました。
3月
日時:2018年3月26日(月)18:50~20:00
・テーマ:「東日本大震災の復興状況と課題」
~主要被災三県の行政機関の現場から~
・講師:北嶋 秀明 氏
(一級建築士事務所ETRA環境技術研究所 代表)
東北大震災から7年目の春。住まいやまちの復興は着実に進んでいるように見えますが、今なお約8万人の避難者を数え、約2万人の方々が不自由な仮説住宅の暮らしを余儀なくされており、復興の新たなステージに応じた切れ目のない支援が必要とされています。
今回は、災害を人々の居住環境に存在する様々なリスクが引起す自然的あるいは人為的な現象と捕らえ、災害のリスクは、災害の要因となる現象である「ハザード」、それが人間の居住域と重なる「曝露」、都市や地域及び住民がもつ「脆弱性」の三つの要因が重なることで生じており、このうち、「脆弱性」への対応は可能であり、我々が取組むべきターゲットであると主張されている北嶋さんに、震災遺構と復興ツーリズム、津波避難施設、津波避難計画、応急仮設建築等の視点から、氏がこれまで東北で担当されてきた復興支援業務の実情と課題について語っていただきました。
1月
・日時:2018年1月22日(月)18:50~20:00 (開場18:45)
・テーマ:「二地域居住の試み」
・講師: 片山 一郎 氏 (川場二地域居住推進協会)
『人生100年時代』における一つの選択肢として「二地域居住」があります。
「二地域居住」とは、都市と農村のそれぞれに拠点を設け、複数の仕事を持ちながら組織にとらわれない働き方を追求するライフスタイルです。都会と農村、双方の利点を取り入れ、現在の生活基盤を活かしながら新しいライフスタイルを実現できるなどのメリットがある半面、地域コミュニティへの参加、老親の遠距離介護、、田舎の不動産の相続、働き方改革、副業・起業、フリーランスという選択など、乗り越えるべき多くの課題があることも事実です。
50~60代のサラリーマンが直面するライフスタイルの激変への一つの提案として、今回は、川場二地域居住推進協会の片山さん(都市工14回生)に、ここ十数年間の試みの軌跡を辿りながら、「二地域居住」の現状と展望についてお話しいただきました。
2017年
1月
・日時:1月16日(月) 18:50~20:00 (開場18:45)
・テーマ:東京ゆりかご幼稚園と里山教育
・講師:内野彰裕 氏 (学校法人内野学園 東京ゆりかご幼稚園・園長)
渡辺 治 氏 (渡辺治建築都市設計事務所・所長・工博)
八王子市にあって自然教育、体験教育を通して豊かな心を育むことをモットーとする東京ゆりかご幼稚園とその里山教育が、今年8月、2016年キッズデザイン賞で最優秀賞の内閣総理大臣賞を受賞しました。
同園は、理想的な里山教育を行うために、6年かけて広大な森に三方が囲まれた2.3haの土地を手に入れ、強風と雨雪が吹きつける高台に車道を通し、治水し、北の強風は高さ6mの壁で遮り、南に開いて夏の季節風を取り入れて、森の冷気を入れる自然冷房を実現しました。
また、畑や棚田で里山を再現し、100mのえんがわを設けた教室と里山文化を連続させました。敷地裏には夜間に在来の動物も降りてくる47haの森が控えており、この大自然と里山文化を通じて、子どもたちは創造性と冒険心をはぐくむことができます。
こうした「里山教育」を中心に据えた同園の教育哲学や施設デザインの考え方などを園長の内野氏と建築設計を担当された渡辺氏にお話ししていただきました。
2月休講
3月
・日時:3月27日(月) 18:50~20:00 (開場18:45)
・テーマ:「ふるさとになれるまち
?谷中の暮らしと歴史を活かすまちづくり」
・講師: 椎原 晶子 氏
(NPO法人たいとう歴史都市研究会副理事長、
地域プランナー、晶地域文化研究所代表)
谷中界隈には、明治、大正、昭和、平成と各時代の家があります。古くからの家を住まいや店、仕事場で使うことは、各時代の価値観、四季の過ごし方、近所付き合いなどを今の人々が自然に身につけるきっかけにもなります。
同地域では、日頃のご近所づきあいや町会活動等に加え、1980年代より、まちの自然や文化の再発見プログラムを重ねて、新旧住民や訪れる人がまちの特徴や価値を分かち合えるようになってきました。その中でも不動産としては流通しがたく、保存改修に法的制約の多い伝統的な日本家屋について、NPOによる借受サブリース、古民家活用の計画支援、管理運営委託などで持ち主と使い手、まちの人々をつないでいます。
今回は、永年同地域のまちづくりに取り組んでこられた地域プランナーの椎原さんに、谷中に今住む人もこれから住む人も「ふるさと」と言えるまちをめざして、暮らしの文化、まちとのつながりを次世代に引き継いでいけるしくみをどのように開拓していくべきかなど、まちづくりの課題についてお話ししていただきました。
4月
・日時:2017年4月24日(月)18:50~20:00 (開場18:45)
・テーマ:「日本の商店街の底力を探る」
~全国100商店街取材を通してみる実態と課題~
・講師:三橋 重昭 氏
(NPO法人まちづくり協会顧問(前理事長)、元中小企業診断士、SC経営士)
地方創生が叫ばれている昨今ですが、かつては町の顔として、地域活性化の担い手あるいは地域コミュニティを形成する場として地域に貢献してきた商店街は、近年、中心市街地の空洞化や経営者の高齢化などにより、その多くは活力を失いつつあります。
こうした状況を踏まえて、今回は、これまで全国大小100の商店街を取材してレポート記事を書いてこられ、日本の商店街事情について詳しい、NPO法人まちづくり協会顧問(前理事長)の三橋さんに、全国の主要商店街の紹介、地域商店街の課題や変容、その将来性、都市計画との関わり合いなどについてお話しいただきました。
なお、三橋さんは、この3月末に、共編著として『地域商業の底力を探る』(白桃書房刊)を出版されました。
5月
・日時:2017年5月29日(月)18:50~20:00 (開場18:45)
・テーマ:「森林バイオマス発電も含む総合林業」
・講師::齋藤 大輔 氏
(グリーン・サーマル株式会社 専務取締役)
森林は、「緑の社会資本」といわれるように、国土の保全、水源の涵養、地球温暖化の防止、生物多様性の保全、木材等の林産物供給などの多面的機能を有し、都市社会を含む国民生活の多くが、この森林の効用に依存しています。そして貴重な森林資源を将来にわたり有効適切に利用するためには、「植える→育てる→使う→植える」という、いわゆる循環利用サイクルの推進が必要となります。
今回は、こうした森林の循環利用サイクルを前提に、植林から素材生産事業、さらには森林バイオマス発電事業を手掛けられているグリーン・サーマル株式会社の齋藤さんに、事業の基本的な考え方と現状、そして将来の森林資源の利用方法や林業施行のあり方などについて語っていただきました。
6月
・日時:2017年6月26日(月)18:50~20:00 (開場18:45)
・テーマ:「今敢えて、民間都市プランナー論」
・講師::佐伯 直 氏
(株)エックス都市研究所 特別顧問、(一社)都市計画コンサルタント協会 理事
(特非)日本都市計画家協会 監事
来年は、我が国の都市計画制度の基本法である新都市計画法が昭和43年に制定されて50年を迎えます。この新法により、市街化区域・市街化調整区域の区域区分制度や開発許可制度など基本的な都市計画の枠組みが創設されました。その後も平成4年に都市計画マスタープラン制度が導入されるなど都市計画法制の充実が逐次図られてきました。
ちなみに、現行都市計画法の基となった旧都市計画法の制定は、大正8年〈1919年〉に制定されており、再来年が100周年になります。
こうした大きな節目の時期に、永年、民間都市計画コンサルタントの世界で活躍されてきた佐伯さんに、我が国の都市計画や都市開発の舞台で民間都市プランナーが果たしてきた役割とその周囲を取り巻く状況を振り返っていただくとともに、今、民間都市プランナーの世界で進んでいる、その社会的立場を変えようとする新たな動き(認定都市プランナー制度等)などの話題にも言及していただき、これからの民間都市計画プランナーの在り方について語っていただきました。
7月
・日時:2017年7月24日(月)18:50~20:00 (開場18:45)
・テーマ:「21世紀の万博??愛知2005から大阪2025へ」
・講師: 彦坂 裕 氏
(建築家・環境デザイナー)
1970年の大阪万博開催から約半世紀、そして2005年の愛知万博から10年余を経て、今再び2025年国際博覧会の大阪誘致に向けた活動が盛り上がっています。今年の6月14日には、パリで開催されたBIE(博覧会国際事務局)総会でわが国のプレゼンテーションが行われました。オリンピックとならび、万国博覧会はイベント型の都市形成の起爆剤であり、社会の近代化・現代化のための国際的なシステムでもあります。
この機会に、改めて、万博は都市にどのようなレガシーを残したのか、万博という情報環境は社会の変容とともにどのように推移しているのか、そもそも万博とは何かといった国際博覧会にまつわる様々な問題設定の枠組みの中で、これまで愛知(2005年)、サラゴサ(2008年)、上海(2010年)、ミラノ(2015年)、アスタナ(2017年、現在開催中)の日本館、ならびにBIEのパビリオン審査委員会に関わってこられた建築家・環境デザイナーの彦坂裕さん(都市工11期)に、万博と都市について、文化的な俯瞰やその現実化への実情も含めて語っていただきます。
同時に2020年のドバイ、そして現在立候補している2025年大阪の状況についてもご案内していただきました。
8月
休講
9月
・日時:2017年9月25日(月)18:50~20:00 (開場18:45)
・テーマ:「都市と博物館ー博覧会から博物館、都市へー」
・講師: 小笠原 廣樹 氏
(東京都人材育成センター客員教授)
全国で5千数百館、都内だけでも約3百館の大小さまざまな個性あふれる博物館施設が存在し、其々の特色を活かした活動が展開されています。そこでは、歴史や美術、自然、科学や地球環境など多岐にわたるテーマについて、楽しく学びながら、明日を考えるための糧を手に入れることができます。
今回は、「都市と博物館―博覧会から博物館、都市へー」と題して、最近まで江戸東京博物館に勤務されていた小笠原廣樹氏(都市工11期生)から、わが国の博物館の成立過程、博物館創設時の時代背景、博覧会と博物館、博物館における都市の扱いなど、博物館を楽しみ、都市を楽しむ諸視点についてお話ししていただきました。
10月(NPO法人都市工会の公開パネルと共催)
・日時:2017年10月21日(土)14:00~16:00頃 (開場13:30)
・基本テーマ:「災害対策とソーシャル・キャピタル」
*講演1:「レジリエンス構築とソーシャル・キャピタル」
講演者:澤井 安勇 氏(都市工会 代表理事)
(予定されていた石田祐氏(宮城大学事業構想学部准教授、
日本NPO学会事務局長)が休場のため、代講)
*講演2:「地域の力を引き出す~市民先行・行政後追いの災害対策」
講演者:加藤 孝明 氏
(東京大学生産技術研究所准教授(地域安全システム学))
*質疑・意見交換:
モデレーター: 澤井 安勇 氏(NPO法人都市工会代表理事)
コメンテーター: 守 茂明 氏((一財)都市防災研究所事務局長)
奈良 吉倫 氏(奈良技術士事務所主幹、伊奈町行
政区区長)
佐藤 久弥 氏(さいたま市都市局都心整備部都心
整備課長)
地域コミュニティの中で人々がある種のアイデンティティを共有し、お互いを信頼し、互恵的に何かをするような状況があることを、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)が存在する状況と定義することができます。
近年、地域コミュニティにおける信頼感や社会的結束を高め、多様なソーシャル・キャピタルを豊かにすることにより、様々なまちづくり効果や災害時におけるレジリエンス(対応力)の強化に役立てようという考え方が強まっています。今回の都市工塾では、お二人の講師から、「災害対策とソーシャル・キャピタル」を基本テーマとして其々ご講演いただき、コメンテーターからの意見をいただいた後、フロアをまじえて自由討議を行いました。
11月
・日時:2017年11月27日(月)18:50~20:00 (開場18:45)
・テーマ:「低炭素型都市づくりの現状と今後の展望」
・講師: 村木 美貴 氏
( 千葉大学大学院工学研究院教授)
地球温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定が1年前に発効したことにより、わが国においても改めて低炭素型都市づくりの重要性が認識されています。環境問題への対応を都市計画の分野から図る上からも、今後低炭素型都市づくりがさらに広がることが期待されますが、これを実際の都市環境で実践し、また一定の成果を得るには、社会的にも経済的にもさまざまな仕組みが必要になります。
現在、欧州の各都市では低炭素化の試みを政策的に推進し、ユニークな試みや実験をしているところが少なくありません。都市づくりでの開発と連動した取り組みがなされています。
今回は、日本、英国での低炭素化型都市づくりや都市のエネルギー対策、さらにタウン・マネジメント等にも 深く関わってこられた千葉大学大学院の村木美貴さんにお話しいただきました。
12月
・日時:2017年12月18日(月)18:50~20:00 (開場18:45)
・テーマ:「CCRCとランドスケープデザイン:quality of life実現への
視座」
・講師:関 由美子氏(一般社団法人生涯活躍のまち推進協議会地域プ
ロデューサー)
上山 良子氏(ランドスケープ・アーキテクト、長岡造形大学
名誉教授・前学長)
4人に1人以上が高齢者という本格的な高齢社会となったわが国ですが、最近「日本版CCRC」に取り組む自治体・地域の話題を耳にするようになりました。CCRCは、米国で発展したContinuing Care Retirement
Community、すなわち高齢者が移り住み、必要なケアや生活支援サービスを受けながら、生涯活動や社会活動に参加することができるコミュニティーのことです。政府は「地方創生」推進及び「一億総活躍社会」実現のため、日本版のCCRCを「生涯活躍のまち」(注)と名付けて、人口減少と高齢化が進む日本の各地域で推進することとし、現在、一般社団法人生涯活躍のまち推進協議会が中心となって、同構想の導入を進める自治体や地域、企業を支援しています。
今回は、この日本版CCRCである「生涯活躍のまち」事業に関する動向を同協議会地域プロデューサーの関由美子氏から、そして「生涯活躍のまち」実現のキーとなる「クオリティー・オブ・ライフ」をどう実現するかについて、「場を創る」ことの原点をランドスケープ・アーキテクトの上山良子氏から其々お話しいただき、改めて、「我がこととしての生涯活躍のまち」の意味を捉え直す機会になりました。
2016年
1月
・日時:1月25日(月) 18:50~ (開場18:45)
・テーマ:「森林バイオマス発電事業への挑戦」
・講師:青山 俊介 氏
((株)エックス都市研究所取締役特別顧問)
再生可能エネルギーの活用政策が進む中で、バイオマス資源の利用率も高まっていますが、ほとんど利用率が変化していない分野が森林バイオマスであり、特に林地残材の利用が進んでいない現状にあります。
こうした状況の中で森林バイオマス発電事業のビジネスモデルとして注目されているプロジェクトが、国内第1号のFIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)事業として2012年にスタートした(株)グリーン発電会津が実施している木質バイオマス発電事業であり、ちなみに、同社は、昨年度の新エネルギー大賞を受賞しています。
今回は、会津をはじめとして各地で進められている森林バイオマス発電事業を中心的に推進しているグリーンサーマル株式会社の会長でもあるエックス都市研究所の青山さん(都市工3回生)に、これまでの経過を踏まえて、わが国の森林バイオマス発電事業の概要と、その限界と課題、海外展開の可能性などをお話していただきました。
2月 休講
3月
・日時:3月28日(月) 18:50~ (開場18:45)
・テーマ:「2025年問題と地域包括ケアシステム」
・講師:藤井 多希子 氏
(政策人口研究所代表理事、中野区医師会事務局長)
団塊の世代全員が後期高齢者層に達し、4人に1人が75歳以上という超高齢社会となる「2025年問題」が話題となっています。これまで国を支えてきた団塊の世代が給付を受ける側に回り、医療、介護、福祉サービスへの需要が急激に高まって社会保障財政のバランスが崩れる、とも指摘されています。
この2025年を目途に、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される仕組みを中学校区単位で構築しようとする「地域包括ケアシステム」実現の必要性が叫ばれています。地域包括ケアシステムがうまく機能しなければ、「2025年問題」はもちろんのこと、その後の「2050年問題」も乗り越えることができず、地域の存続すら危ぶまれる、とも懸念されています。また、この地域包括ケアシステムをどうデザインするかは、単に、医療・福祉の課題だけでなく、安全・安心で住みやすい生活コミュニティづくりという重要な都市政策課題でもあります。
今回は、中野区医師会で、地域包括ケアシステム構築に向けて医療・福祉連携の推進に取り組まれている藤井さんから、中野区医師会が中心になって進めている多種連携の事例の紹介、人口学的視点からの今後の課題等についてお話いただきました。
4月
・日時:4月25日(月) 18:50~ (開場18:45)
・テーマ:「身の周りの防炎化による防火の推進」
・講師:鷺坂 長美 氏
(公益財団法人 日本防炎協会常務理事)
平成25年の火災件数は48,095件、死者は1,625人を数えますが、死者の77%は建物火災によるものであり、さらにその88%は住宅火災によるものです。また、この住宅火災の死者の70%以上が高齢者の方々で、その多くが逃げ遅れ、着衣着火などにより命を落とされています。このため、消防庁はじめj各消防関係機関は、高齢者、特に一人暮らしの高齢者には、周辺環境を燃えにくくする防炎品の普及を推奨しています。
今回は、この防炎品の普及推進を担当されている公益財団法人日本防炎協会の鷺坂さんに、「防炎」のしくみ、制度、その効用などについて、具体的事例を交えながらお話していただきました。
5月
・日時:5月30日(月) 18:50~20:00 (開場18:45)
・テーマ:「課題先進国日本でNPOが担う役割―NPOがもたらす人的・経済的効果の検証」
・講師:
辻 麻里子 氏((一社)環境問題翻訳チーム・ガイア代表、宮前まち倶楽部主宰)
辻 陽一郎 氏(NPO新聞主宰、国学院大学ボランティアコーディネーター)
1995年の阪神・淡路大震災後のボランティア活動の高まりを背景に特定非営利活動促進法(NPO法)が制定されたのが1998年。間もなく20年を迎えようとする我が国のNPO活動ですが、資金的脆弱性など諸課題も指摘される中で、社会的起業やコミュニティビジネスなど新しい動きも育ち始めています。行政や企業だけでは解決できない課題が山積する中で、第3のセクターとして、民間の非営利公益活動であるNPOセクターの役割は、今後ますます重要になってくるものと思われます。
今回は、朝日新聞連載のコラム「新市民伝」を単行本化するプロジェクトをご家族一同で担ってこられた辻麻里子さんとご子息の陽一郎さんに、どんな人が、どんな思いで、どんな分野のNPO活動を行ってきたのか、また、それがどんな人的・経済的効果をもたらし、どんな手法や制度が生まれているのか、などについて、具体的事例とともにお話していただきました。
6月
・日時:6月27日(月) 18:50~20:00 (開場18:45)
・テーマ:「ボッサ・ノーヴァな建築考」
-日本の建築設計界事情をブラジルから見る-
・講師: 南條洋雄 氏 (南條設計室 所長)
昨今、新国立競技場のデザイン設計問題やル・コルビュジエ設計の国立西洋美術館の世界文化遺産指定問題など建築設計に関する話題が目立つようになっています。
今回は、「住宅から都市デザインへ」という標語を掲げ、建築と都市を同じ目線で捉え、美しい日本の街を目標に、コミュニティとの関わりを大切にした活動を続けられておられる建築家の南條さん(都市工学科5回生)に、氏の建築観、都市観を語っていただきました。
なお、南條さんは、丸10年に及ぶブラジル移住生活の体験を踏まえ、一年前に今回のテーマと同名の著書を発刊された、自他ともに許す「ブラキチ」です。ちなみに、ボッサ・ノーヴァは、ブラジル発祥のジャズのジャンル名ですが、その意味は、「新しい隆起」ということだそうです。
7月
・日時:7月25日(月) 18:50~20:00 (開場18:45)
・テーマ:「大手町・丸の内・有楽町のまちづくり」
・講師:井上 俊幸 氏
(三菱地所株式会社 開発推進部長)
日本最大のオフィス街である東京駅と皇居の間に位置する大手町・丸の内・有楽町地区は、1988年の再開発計画推進協議会設立以降、PPP(Public Private Partnership)の考え方に基づき、エリア一体となった大型再開発プロジェクトが進展しており、東京五輪後の街並みは大きく変貌するものと予測されています。
同地区では、建物の更新が進むなかで、単なる建て替えにとどまらず、オフィス以外の様々な機能導入や、建物敷地を越えた公共空間の整備・活用によってエリア全体の価値を持続的に高めようとする動きが加速されていますが、こうした動向や今後の展望について、三菱地所の井上さん(都市工24回生)からお話ししていただきました。
8月休講
9月
・日時:9月26日(月) 18:50~20:00 (開場18:45)
・テーマ:「世界の記憶」候補・上野三碑を読む
・講師:熊倉 浩靖 氏
(群馬県立女子大学教授、群馬学センター副センター長)
昨年9月日本ユネスコ国内委員会が開催され、次の「世界の記憶」(Memory of the World)候補として、杉原リストとともに上野三碑(こうずけさんぴ)が選ばれました。我が国の「世界の記憶」は、御堂関白記や東寺百合文書などまだ限られたものしかない中で、群馬県高崎市に現存する三つの石碑が、なぜ選ばれたのでしょうか。
今回は、この上野三碑の現代的意義と今後の地域づくりとの関わり合いなどについて、群馬県立女子大学教授の熊倉さんから、お話ししていただきました。
熊倉さんは、日本最初のNPOシンクタンクでまちづくり活動、自治体経営等に貢献され、現在は、同大学群馬学センター副センター長として、グローカルな世界形成に向けた活動を続けられています。
10月
第15回ホームカミングデイ参加企画
・日時:2016年10月15日(土)午前10時30分~
・テーマ:「都市と劇場」
-劇場法以後の公共ホールの役割と活動を考える-
・講演とパネルディスカッション:
<基調講演者>
井上建夫(公益財団法人びわ湖ホール総括アドバイザー(前館長))
藤村順一(兵庫県立芸術文化センター副館長)
<コメンテーター>
田代雅春(新潟市北区文化会館館長・TM魁文化研究所所長)
石田義明(公益財団法人東松山文化まちづくり公社理事長)
“都市は、芸術を育てるとともに芸術であり、劇場をつくるとともに、劇場である。”というルイス・マンフォードの言を引用するまでもなく、都市の活力や創造性と芸術・文化活動とは密接な関わりを持っており、近年の創造都市政策においても芸術・文化活動とその施設空間などに戦略的意義づけが行われています。
わが国においても、2012年6月に、いわゆる劇場法(劇場・音楽堂等の活性化に関する法律)が施行され、自治体における芸術文化政策の意義および劇場・文化ホールなどのあり方や意味づけが改めて問われはじめています。
今回の都市工塾においては、都市の時代といわれる現在、都市における芸術・文化の多様な役割やその意味づけを、具体的な劇場・公共ホール等の実態に即して検証し、今後の方向性、可能性等を探ろうとするものです。
当日は、お二人の基調講演者から、それぞれが関係する公共ホールを事例に公共ホールの役割と活動について、課題提起を含めお話しいただき、さらに、お二人のコメンテーターからそれぞれの意見を述べていただいた後、フロアからも多数の質問・意見がありました。
11月
・日時:11月28日(月) 18:50~20:00 (開場18:45)
・テーマ:英国の歴史遺産「桟橋」から見えてきたもの
・講師:井上 聰史 氏
(政策研究大学院大学 客員教授)
井上氏は、2003年国際港湾協会事務総長のとき(現在は名誉事務総長)、都市工塾で国際物流と都市づくりについて、お話しいただきましたが、今回は、ライフワークの桟橋について語っていただきます。
英国の海岸リゾートに1800年代建造された「桟橋」は、現存するものが少なくなっており、60弱のほぼ全数踏破を期にレポートをまとめられました。歴史を越えて人々に楽しまれ続ける桟橋の全容を御紹介いただくとともに、英国海岸リゾートの豊かなライフスタイル、これから日本が目指すべき海と共生する地域づくりの方向を語っていただきました。
12月
・日時:12月19日(月) 18:50~20:00 (開場18:45)
・テーマ:八ッ場ダムの概況
・講師:奈良 吉倫 氏 (奈良技術士事務所)
八ッ場ダムは、群馬県長野原町の利根川水系吾妻川に建設中の多目的重力式コンクリートダムですが、地元の激しい反対運動やその必要性についての論争などから、民主党政権の脱ダム政策への転換に伴い2009年に一時工事が中断されマスコミを賑わせました。その後2011年に事業継続が決まり、2015年2月にはダム本体建設工事の起工式が行われ、現在、2019年度の完成を目指して工事が行われています。
今回は、この八ッ場ダム問題について、住民の生活再建、地域振興などに携わってこられた奈良さんに、これまでの経緯や最近の状況などについて語っていただきました。
2015年
1月
・日時:1月26日(月) 18:40~ (開場18:30)
・テーマ:「アートによる上野‐谷中地域の活性化」
・講師:
坂元 暁美 氏(〈アートリンク上野‐谷中〉実行委員長)
森 徹 氏 ( NPO 上野の杜芸術フォーラム 代表 )
明治以来、わが国の文化の宣伝塔の役割を担ってきた
「上野の杜」とその地続きの谷中地域を一体として、同地域
をアートにより活性化することを目的に、20年近くユニーク
なアートイベントを展開されてきた〈アートリンク上野‐
谷中〉実行委員会と、同じく博物館動物園駅という廃駅を、
美術館として再生させようとする「 MinM(ミュージアムイン
メトロ)プロジェクト 」を展開されている〈NPO上野の杜芸術
フォーラム〉の活動の成果等について、それぞれの代表から
語っていただきました。
2月休講
3月
・日時:3月30日(月) 18:40~ (開場18:30)
・テーマ:「首都圏における鉄道整備とまちづくり」
・講師: 石田 義明 氏
(NPO法人フォーラム自治研究 理事 調査研究部長)
2020年東京オリンピックに向けて、首都圏の都市開発の
動きがあわただしくなっていますが、鉄道交通の分野で
もこの3月14日に「上野東京ライン」が開業し、宇都宮
線・高崎線・常磐線と東海道線が相互直通運転すること
となり、また成田・羽田直結線構想など羽田への新たな
路線開設構想も熱を帯びるなど大きな動きがみられます。
交通政策審議会の最近の審議状況等も含めて、こうした
ホットな話題を始め、東京圏と京阪神圏との比較、東京
北東部の鉄道路線データ、さらには、今年開業10年を迎
えるつくばエクスプレスのお話など盛りだくさんの首都
圏鉄道情報を、自他ともに認める鉄道マニアでもある
石田さんに語っていただきました。
4月
・日時:4月27日(月) 18:50~ (開場18:45)
・テーマ:「最近のマンション供給動向について -湾岸エリアと超高層タワー」
・講師:小川正氣 氏
(住友不動産(株)理事)
東京の不動産市況は、このところの東京オリンピック特需
などもあって価格上昇が続いており、都心地域を中心にマン
ション重要も高まっていると言われています。そうした状況
の中で、リーマンショック後のマンション市場の近況と今後
の見通し、最近湾岸エリアを中心に急増しているタワーマン
ションの考察、デベロッパーが狙いとしているマンション供
給地の考察等について、住友不動産(株)の小川さんから
語っていただきました。
5月
・日時:5月25日(月) 18:50~ (開場18:45)
・テーマ:「万博から45年、バシェ音響彫刻の修復と活用にむけて」
・講師:飯田一夫氏
(音楽プロデューサー / バシェ協会 設立理事・事務局長)
1970年大阪万博から今年で45年。当時、「鉄鋼館」の演出
をした故武満徹氏に依頼されてフランス人の音響彫刻家バシェ
兄妹が日本人助手とともに制作し、展示された巨大な金属製の
音響彫刻の一部が近年復元され、先般国立近代美術館でもその
ユニークな音響が披露されました。未だ倉庫等に眠る残りの
部材の修復と活用については、バルセロナ大学と京都市芸術大、
東京藝術大学などにより、現在、本格的な調査研究、修復、活
用とその後の収蔵等について模索が続けられています。このプ
ロジェクトは、都市に埋没する貴重なアートの修復や活用、そ
してアートマネジメントのあり方の視点からも興味深いものが
あります。永年音楽を中心とした都市のアートイベント・プロ
ジェクトの企画・制作に従事され、今年、仲間達とバシェ協会
を立ち上げられた飯田一夫氏から、このプロジェクトが提起す
る諸課題や現在進められているアート・イベントについて語っ
ていただきました。
6月
・日時:6月29日(月) 18:50~ (開場18:45)
・テーマ:「国宝・厳島神社の謎を解く~都市と参道から考える~」
・講師:岡野 眞 氏 (建築家・岡野設計監理事務所代表)
広島県廿日市市に鎮座する国宝・厳島神社は、平成8年にユネスコ世界文化遺産に登録され、年間300万人もの観光客・参拝者を国内外から集める、なじみ深い有名スポットとなっています。
しかしながら、まだ神社については解らないことが多く、しかも定説にも多くの疑問が残されています。優美な社殿は本当に平清盛によるものか、台風等の災害に対する対策はどのように考えられているか、門前町や参道の形成経緯などについて、建築家の岡野さんから都市と工学の観点から語っていただきました。
7月
・日時:7月27日(月) 18:50~ (開場18:45)
・テーマ:「非常食」から「災害食」へ
- 日本災害食学会と認証制度について
・講師::守 真弓 氏
(日本災害食学会 理事・事務局長、
NPO法人高度情報通信都市・計画シンクタンク会議
理事・事務局長)
地震などの自然災害時に、首都圏など人口が多く帰宅困難者が
大量に発生する可能性が高い都心部では、被災者の生活について
様々な問題が懸念されています。その中で、特に、「食」に関す
る問題について考え、幅広い分野の知恵を集め、情報を社会に発
信し、研究者を育てるという目的で、2013年9月1日、「日本災害
食学会」が設立されました。
「非常食」と「災害食」との違い、首都直下地震など大災害で
予測される「食」の問題およびその対策等について、ユニークな
同学会の活動内容の紹介も含め、学会理事・事務局長の守 真弓
さんにお話をしていただきました。
9月
・日時:9月28日(月) 18:50~ (開場18:45)
・テーマ:「認知症のためのまちづくり」
・講師:井上 裕 氏(明海大学名誉教授)
厚生省によれば、2012年に462万人(高齢者の約7人に1人)で
あった認知症高齢者は、2025年には700万人(約5人に1人)に増大
すると予測されています。その一方で、特養や有料老人ホームと
いった介護保険施設や居住系のサービスの整備は、急増する認知症
高齢者に追いつかず、このため、厚生省の新オレンジプランでは、
在宅の認知症高齢者をサポートする体制づくりに行政施策の重点が
置かれています。
居住環境デザインのあり方など地域づくりの必要性は、介護を
受ける認知症の人自身の視点からの介護・支援という意味からも
重要ですが、これまでの認知症に対応したデザインは、(先進諸
外国においても)主に屋内環境についてであり、戸外へのアクセ
スをいかに提供するかが、認知症の人自身の視点に立った場合の
大きな問題として残されています。
在宅の認知症高齢者の激増が予想されている日本における今後の
都市計画やまちづくりに何が求められているか、イギリスにおける
実証研究の結果の紹介とともに、明海大学名誉教授の井上さんにお
話いただきました。
10月
10月の都市工塾は、第14回ホームカミングデイHCD参加プログラムの一環として行われ、講演会場にて、最新備蓄用災害食の資料展示、試食も行われました。
・日時:2015年10月17日(土)午前10時30分~12時
・テーマ:自助共助の防災がもたらす「新しい社会構造」
~備蓄改善運動に見られる地域連携の新しい構図~
・講師:守 茂昭 氏(一般社団法人 都市防災研究所 上席研究員)
この20年の間に、阪神淡路大震災、中越沖地震、東日本大震災などの巨大災害からの貴重な体験を通じて、住民間のネットワークによるコミュニティの充実と災害対応力(レジリエンス)の密接な関わりが広く認識されるようになりました。
それは同時に、次代の社会構築にはコミュニティの充実が不可欠であることを示唆しています。そして、コミュニティの住民間のネットワーク関係から生まれる様々な効果・効用をソーシャルキャピタル(社会関係資本)として位置付け、防災対策はじめ幅広い政策分野に応用しようという動きも近年定着しつつあります。今回は、都市防災研究所の守さんから、東京駅周辺防災隣組の設立、備蓄改善としての災害食の推奨などの活動事例に基づき、衣食住という日常性の高いテーマを通じたソーシャルキャピタルの醸成、地域連携の強化などについてお話いただきました。
11月
・日時:11月30日(月)18:50~ (開場18:45)
・テーマ:「サステイナブル・デザインの軌跡」
・講師:竹内 佑一 氏
(NPOエコ・エネルギーによる地域交通システム推進協会理事長)
近年、EUのサステイナブル・シティ政策に代表されるように、
都市・地域政策、まちづくり・建築等の幅広い分野で、地球環境に
配慮した設計思想、すなわちサステイナブル・デザインが基本的
潮流となっています。
今回は、永年、IBS(計量計画研究所)で都市計画の環境分野
への拡大に貢献されてきた竹内さん(都市工4期生)に、これま
で手がけられてきたサステイナブル・デザインの軌跡を幅広い
視点からお話いただきました。
12月
・12月21日(月)18:50~ (開場18:45)
・テーマ:「マルセイユー斜陽都市を
欧州文化首都に押し上げる都市デザイン」
・講師:鳥海 基樹 氏
(首都大学東京都市環境学部建築都市コース准教授)
フランス最古の都市であり、パリに次ぐ大都市であるマルセイユ
は、港湾機能の移転等により、長期にわたり都市全体での衰退が続
き、フランスの斜陽都市のトップランナーと呼ばれていました。
このマルセイユが、近年、ユーロメディテラネ構想(意訳すれば
欧州地中海都市覇権構想)なる都市再生プロジェクトで大きく変貌
しつつあり、MUCEM(欧州地中海文明博物館)の移転、トラムの整備
なども進み、2013年には欧州文化首都に選出されるなど復活を遂げ
つつあります。ニューディール政策の側面を持ち、竣工後も雇用が
発生する持続性をも有するこの計画のお話を中心的テーマとして、
首都大学東京の鳥海さん(都市工28期生)に都市再生のあり方をお
話していただきました。
2014年
1月
・テーマ:さいたま市における「新しい公共」関連施策について -マッチングファンド事業を中心として
・講師:大沢 教男 氏(さいたま市 市民・スポーツ文化局 市民生活部コミュニティ推進課 市民活動支援室 室長)
近年、各自治体における市民活動の推進、公民協働の促進
の動きが活発になっていますが、その中でも、積極的な取り
組みが目立つさいたま市の事例について、これまで取り組ん
できた、指針や条例づくり、サポートセンター整備、
ソーシャルキャピタル調査、マッチングファンド事業
などの施策について、担当の大沢市民活動支援室長にお話し
いただきました。
3月
・テーマ:「路地はまちの宝」
・講師:今井 晴彦 氏
(全国路地のまち連絡協議会世話人)
近代の都市計画は、広幅員の街路整備を至上命題として
いるように見えますが、歴史的には、わが国のまちは、
路地でできており、平安時代、江戸時代からの路地が今でも
生き残っています。お年寄りなど社会的弱者も安心して暮ら
せる貴重な空間である路地の価値とこれからの位置づけなど
について、全国路地のまち連絡協議会を立ち上げ、10年以上
活動を続けられている今井さんから、お話していただきました。
4月
・テーマ:「ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)を考える」
・講師:澤井 安勇 氏(NPO法人都市工会代表理事)
大災害からの復興まちづくり論やコミュニティー研究などで 必ず取り上げられる人々の絆、ネットワークの問題は、ソー シャル・キャピタル(社会関係資本)論として整理されつつあり、国、自治体などで政策への幅広い適用についても検討
されていますが、物質的な社会資本論と異なり心の領域が絡
むだけに、捉えにくい部分が多く、また、プラスの効用だけ でなく、マイナス面(ダークサイド)についての言及も多く なっています。こうしたソーシャル・キャピタルの諸側面に ついて考えてみたいと思いました。
12月
・日時:12月22日(月) 18:40~ (開場18:30)
・テーマ:「旧軽井沢森地区建築協定の歩み」
・講師: 武藤 清 氏
(諏訪の森建築協定の会代表、(株)星光社代表取締役)
2001年に旧軽井沢の別荘地の真ん中にマンション計画が発表
され、周辺別荘住民による反対運動が起こりました。2003年に
反対運動の過程で計画地を取り囲むように建築協定を締結し、
マンション計画を撤回させ、戸建別荘地分譲に変更させること
に成功しました。その後、10年が経過し建築協定も新たに更新
されました。
今回は、これまで粘り強く交渉を続けてこられた『諏訪の森
建築協定の会』代表の武藤さんに、今までの経緯および今後の
展開等について、お話を伺いました。
2013年
1月
・テーマ:「地域への省エネルギー住設機器の普及に関する傾向分析」
・講師:吉田 肇 氏
(横浜市環境創造局環境エネルギー課 担当課長)
再生可能エネルギーの活用や省エネルギー住宅の普及は、増大を続ける家庭部門の温室効果ガス排出量の削減に有効な手段と考えられています。 今回は、横浜市で省エネルギー政策等に取り組んでおられる吉田肇氏(都市工14回生)に、太陽光発電システムなど主要な省エネルギー住設機器について、その地域への普及度、傾向分析や導入効果の検証結果についてお話いただきました。
3月
・テーマ:「東日本大震災における津波火災の実態」
・講師: 山田 常圭 氏
(消防庁消防研究センター上席研究官)
東日本大震災から2年が経過し、巨大津波の猛威や原発事故など今回の大災害の検証が各方面で進められ、頻繁に報道もなされていますが、今回の津波により、阪神淡路大震災時に神戸市内で発生した市街地火災の規模を上回る広域市街地火災が発生したことは、余り知られていません。こうした津波火災は過去の大震災時にも発生しており、今後発生が懸念されている首都直下型地震等においても大きな脅威となることが予測されています。今回、三陸沿岸及び仙台市近郊で発生した津波火災の実態を調査された山田さんに、その調査結果と今後の安全な街づくりに向けた課題・視点についてお話してもらいました。
4月
・テーマ:「しぶやコンシェルジュ(しぶコン)と渋谷の街」
・講師: 玉井 美歌男 氏
(一般社団法人しぶやコンシェルジュ代表)
若者、ファッション、生活文化、国際観光文化都市など、多くの形容詞を冠する渋谷ですが、現在、百年に一度の大都市改造が進行しています。既に、渋谷ヒカリエのオープン、東横線・東京メトロ副都心線の相互乗り入れ開始、東急百貨店新東横店のオープンなど話題を賑わしていますが、こうした渋谷の街の知られざる魅力などを、渋谷で暮らし、渋谷を愛する住民目線で模索しながら、渋谷の観光まちづくりを進めてこられた「しぶコン」(一般社団法人しぶやコンシェルジュ)代表 玉井美歌男さんに語ってもらいました。
5月
・テーマ:「グラン・パリからセーヌ・ゲートウェイへ -フランスの首都圏整備計画の展開状況-」
・講師: :鳥海 基樹 氏
( 首都大学東京 大学院都市環境科学研究科 建築学専攻准教授)
国の顔とも言うべき首都圏整備の課題については、わが国では、従来の首都圏整備法の抜本改正を意図した「大都市圏戦略基本法(仮称)案」が、民主党政権下の2010年6月に決定されながら現在まで法案審議がなく、見通しがたたない状況となっていますが、これに対して、フランスでは、、2007年のサルコジ大統領(当時)の宣言でグラン・パリ構想が着手され、スケールという点でもコンセプトという点でも興味深い展開を見せています。 今回は、フランスの都市計画に詳しい首都大学東京大学院の鳥海さん(28回生)に、グラン・パリ構想の前史と副産物にも焦点をあて、また、プロジェクト・オリエンティッドの行政ガヴァナンス構築などの話題にも触れながら先進国フランスの首都圏整備の在り方を話していただきました。
6月
・テーマ:「都市工塾15年の歩みと日本社会のガバナンス・シフト」
・講師: :澤井 安勇 氏
(都市工塾実行委員会事務局長)
都市工塾は、1998年に開講して今年で15年を迎えますが、この15年間のわが国は、デフレ経済を基調とした不活性な社会状況が不安定な政治(15年で13代9人の総理)を生み、さらに進行する人口減少と超高齢化などの社会的減退要因や相次ぐ大災害などが社会の不安定化と停滞を促進するなど、ネガティブカラーの濃い時代でした。そうした中でも、これからの日本社会の分権・市民社会化へのガバナンス・シフトを予感させる動きも見られます。今回は、塾15年の歩みを振り返りながら、こうした動きを整理した話がありました。
7月
・テーマ:「都市の新たなエネルギーシステム」
~スマートエネルギーネットワーク~
・講師:土方 教久 氏
(東京ガス(株)エネルギー企画部
・エネルギー計画グループマネージャー)
東日本大震災と原発事故を受け、国においては、平成22年6月に閣議決定された現行のエネルギー基本計画を見直し、新たな、中・長期戦略を策定することとしています。こうした中で、東京ガスでは、都市ガス・電気などの大規模ネットワークと、高効率コージェネレーション・燃料電池などの分散型エネルギー、太陽光・太陽熱などの再生可能エネルギーを組み合わせ、さらに廃熱等の未利用エネルギーも活用して、地域全体でこうしたエネルギーをネットワーク化し、効率よく利用するシステム、すなわち「スマートエネルギーネットワーク」の構築を進めています。
今回は、このスマートエネルギーネットワークを例に、都市づくりにおけるエネルギーの役割等について、東京ガスの土方教久氏(21回生)にお話いただきました。
8月 休講
9月
・テーマ:「バイオガス発電の現状と今後の展望」
・講師: 小川 幸正(おがわ ゆきまさ)氏
(大林組 環境施設エンジニアリング部 上級主席技師
バイオガス事業推進協議会 理事)
前回に続き、エネルギー関連のテーマとなりますが、EU諸国などでは積極的に取り組まれているバイオガス発電(食品残渣、下水汚泥、ふん尿等を原料とする発電方法)の現状、メタン発酵消化液の処理の課題、ならびに湿潤系バイオマスの資源循環や再生可能エネルギーとしての期待を込めた今後の展望について、大林組の小川さんに語っていただきました。
10月
10月の都市工塾は、東京大学ホームカミングデイ企画
・テーマ:「社寺建築の魅力と保存修理
-国宝出雲大社保存修理事業について-」
・講師:清水建設社寺建築・住宅副部長 金久保 仁 氏
今年は、5月に60年ぶりに出雲大社の平成の大遷宮が行われ、また今月は、20年に一度の伊勢神宮の式年遷宮が行われるなど、我が国固有の社寺建築に注目が集まっています。この機会に、社寺建築の魅力と、文化財修理のノウハウなどについて、出雲大社の保存修理事業などを手掛けられた清水建設の金久保さんからお話していただきました。
11月
・テーマ:「宮大工が語る社寺建築の魅力ー
時代の変遷による社寺のとらえ方ー」
・講師: 吉匠建築工藝 棟梁 吉川輔良氏
前回に続き、社寺建築の魅力について、幅広く、社寺建築、文化財の建立・修復等を手掛けられ、伝統技術の承継にもご努力されている吉匠建築工藝棟梁の吉川輔良さんに古代から使われてきた伝統の大工道具
の実演も交えてお話をしていただきました。なお、吉匠建築工藝は、大工の技術伝承から師弟教育まで社寺建築技術の継承に努め建立を請け負ってきており、神社・仏閣にまつわる一切の建築物で信頼を得ています。
2012年
2月
・テーマ:「転換期を迎えた近代都市計画」
--近著「都市環境デザインのすすめ」にみる人間中心のまちづくりへの回帰--
・講師: 中野 恒明 氏
(芝浦工業大学システム理工学部環境システム学科 教授 /アプル総合計画事務所 所長)
1960年代の全国への近代都市計画制度の導入から約半世紀、大都市の繁栄の一方で、寂れ続けてきた地方都市の中心市街地、それを都市デザイナーとして再生を実践的に支援してきた立場から、またその過程で海外都市を調査し、修正近代都市計画の成果を確認してきた経験を、近著「都市環境デザインのすすめ」の紹介も兼ねて、都市工9期生の中野さんに語っていただきました。
なお、中野さんは、昨年の3・11大震災で液状化被害を受けられながら、被災住宅の復旧支援等にも精力的に取り組まれています。
3月
・テーマ:「山村の抱える課題を道志村の事例を通して考える」
・講師: 大田 昌博 氏
(山梨県道志村村長)
「日本一の水源の郷をめざして」を目標として、清流とおいしい水を育む豊かな森を守り、村民と共に美しい景観と安心して暮らせる村づくりを進めておられる道志村の大田村長に、山村の抱える課題等について、森林再生事業、IT活用事業、産官学連携事業、持続可能な村づくりなどの視点から率直なお話をしていただきました。
4月
・テーマ:「東日本大震災により 破壊された世界観と帰宅困難者問題」
・講師: 守 茂昭 氏
(財団法人 都市防災研究所 上席研究員)
想定外という言葉が流行った東日本大震災ですが、生活の安全感覚は元々多くの思い込みのうえに成り立っている面があります。その思い込みが、正しいと信じられていられる間は、それなりに社会合意の形成にも役立つわけですが、今回の災害のように思い込みが脆くも敗れると、次の政策の指針まで立たなくなることになります。
今回の震災まで、我々がどんな思い込みの上に座っていたか、また、そういった思い込みの中のひとつとして「帰宅困難者問題は重要でない」という、いう思い込みが生まれる必然性があったことなど、興味深いテーマについて、都市防災研の守さん(都市工19回生)から、3月11日のエピソードを織り交ぜながらお話していただきました。
5月
・テーマ:「環境革命の世紀」
環境主義の時代のデザイン、テクノロジー、社会について
・講師:彦坂 裕 氏(建築家・環境デザイナー)
株式会社スペースインキュベータ代表取締役、北京徳稲教育機構大師、千葉大学講師
阪神淡路大震災の前から、カタストロフと都市復興の問題を、都市創造の主題のひとつとして語ってこられ、さまざまなフォーラム・講演・TV出演・著作など、環境や都市に関する国際的な活動をされてきた、彦坂 裕氏(都市工11期生)に、今回は「環境」を時代のテーマとして捉え、その歴史的文脈、文化的展開、環境認識に対する諸外国との差異、環境をテーマにした先進的な都市プロジェクト、環境万博(2005年の愛知、2010年の上海で日本館のプロデュースや設計にも関わった)での取り組みや反響、環境をめぐるテクノロジートレンド、さらに環境の可視化などについて語っていただきました。
6月
・テーマ:「大都市再編構想の落とし穴」
・講師: 田村 秀 氏
(新潟大学法学部 副学部長、教授)
昨今、大阪都構想を始め、中京都構想など大都市を再編(解体)しようとする構想が「改革派」首長によって唱えられていますが、このような構想は都市に何をもたらすのでしょうか?地域主権を旗印に、国を始めとする様々な権力に楯突く「改革派」首長を頼もしく感じる有権者も少なからずいますが、危うさも付きまとっているのではないでしょうか。
田村さんの近著『暴走する地方自治』(ちくま新書)で論じられていることを踏まえ、大都市再編構想の落とし穴ともいうべき諸課題について述べていただきました。
7月
・テーマ:「スマートグリッド・スマートコミュニテイ /横浜での取り組み」
・講師: 北村 清之 氏
(株式会社明電舎スマートグリッドプロジェクトサブリーダー)
横浜市でスマートシティプロジェクトに取り組んでいる北村さんに、スマートグリッドの概念や意義、コミュニティへの展開における課題、横浜スマートシテイプロジェクトの具体的取り組み、さらには東北復興地域や海外での取り組みについても語ってもらいました。
9月
・テーマ:「春の小川」のルネッサンスから大都市東京の復活を
・講師:尾田 榮章(おだひであき)氏
(NPO法人渋谷川ルネッサンス代表)
今年は、童謡「春の小川」が生まれて100年になり ますが、そのモデルとなった渋谷川は、50年前の東京 オリンピックの際、蓋をされ都市下水路となっています。 この渋谷川を、太陽の下を流れる川として再生し、新た な千年紀を生き抜く豊潤な東京に転換していこうという 運動を展開されている、尾田さんからお話いただきました。
10月 (東京大学ホームカミングデイ)
・テーマ:「東京スカイツリーの建設とまちづくり」
・講師: 小櫃 秀夫 氏
(株式会社大林組 開発事業本部 副本部長)
本年5月、新たな東京のシンボルとして高さ634mの「東京スカイツリー」がオープンし、その足元では、商業施設、水族館、プラネタリウムなどが入る「東京 スカイツリータウン」という新しい街も誕生して、多くの人が訪れています。 この東京スカイツリー誕生のいきさつから、デザイン・設計、建設工事の概要、さらには、東京スカイツリーと周辺地区の今後のまちづくりの方向性について、ビジュアルな講演を行っていただきました。
11月
・テーマ:「次の大震災への鉄道の備え」
・講師:阿部 等 氏
(株)ライトレール 代表取締役社長
首都圏では、平日のラッシュ時には、数百本の満員電車が高速で走行しています。そこに、現在その発生が高い確率で予想されている首都直下地震が襲った場合には、重大な脱線・転覆事故が同時多発的に発生し、膨大な数の死傷者が生じることが見込まれます。
こうした鉄道に関わる重大なリスクを正しく理解し、恐れ、可能な限りの準備をしておく必要があります。こうした視点から、都市交通問題の専門家である阿部さん(昭60都市工卒)に過去の大震災における鉄道の経験、今後想定されるシナリオ、最悪の事態から逃れる減災対策の提言などについて語っていただきました。
2011年
1月
・テーマ:「AECENと川崎の国際環境施策」
・講師:牧 葉子 氏 川崎市環境局理事 環境技術情報センター所長事務取扱
2010AECEN優秀賞でも注目された、川崎市の環境施策・国際施策 また、本年は中国・瀋陽市との友好都市締結30周年になり、その近況についてもお話しいただきました。
注:2010年11月10日、「アジア環境法遵守執行ネットワーク(AECEN、エーセンと読む)」から、アジアにおいて環境法の遵守・執行分野で際立った貢献と業績を残した女性行政官に贈られる「2010AECEN優秀賞」(毎年ひとり、各国の環境省の推薦、選定委員会の審議を経る)を授与された。
AECEN(Asian Environmental Compliance and Enforcement Network)とはアジア16カ国*より19の行政機関がメンバー機関として参加。AECENの活動は、米国国際開発庁(USAID)による主要な資金援助の下、国連環境計画(UNEP)、アジア開発銀行、米国環境保護庁、経済協力開発機構(OECD)、及びIGES等が支援している。*
カンボジア、インド、インドネシア、日本、韓国、ラオス、マレーシア、モルジブ、ネパール、中国、パキスタン、フィリピン、シンガポール、スリランカ、タイ、ベトナム
2月
・テーマ:「新しい公共」とまちづくり
・講師:澤井 安勇 氏
(「新しい公共」支援事業運営会議座長)
民主政権に代わって、いくつかの基本政策方針の変更がありましたが、そのひとつが「新しい公共」という市民社会論的視座の理念が実政策化されたことでしょう。今回は、本来の「新しい公共」概念の整理と今年度の補正予算で事業化された支援事業の内容、さらには本当の意味で「新しい公共」を定着化させるための課題等について報告がありました。
3月
・テーマ:「鉄道事業と沿線まちづくり」
・講師:渡辺 功 氏(東急電鉄取締役都市生活創造本部長) 浜名 節 氏(同 都市生活創造本部推進部長)
首都圏の都市・住宅開発の発展は、鉄道沿線のまちづくりの歴史と密接な関連を有しています。今回は、民鉄沿線のまちづくりの歴史と現在および将来の取り組み等について、東急電鉄のケースを次のような内容でお話いただきました。(1)東急電鉄の開発ヒストリー(2)4大プロジェクト(多摩プラーザ、永田町、二子玉川、渋谷)(3)不動産事業の構造転換
5月
・テーマ:「建設情報標準化の周辺」
・講師: 河内 康(財)日本建設情報総合センター主任研究員
建設分野の生産性向上・効率化のためには、図面、コード類、帳票、プロダクトデータなどの建設情報の標準化が必要となっています。こうした建設情報標準化の考え方やこれまでの取り組みなどの周辺的状況を、電子入札システムやCADデータ交換標準フォーマット等の開発に大きな実績を挙げている(財)日本建設情報総合センター(JACIC)の河内康氏(都市工16回生)に解説していただきました。
6月
・テーマ: 「継続的・協調的まちづくりを目指す空間データと VR(Virtual Reality)の活用について」
・講師: 長濱龍一郎 氏 (パナソニック電工株式会社 中央エンジニアリング綜合部環境計画推進グループ)
まちづくりプロジェクトにおけるデザイン上の意思決定や合意形成において、ビジュアル映像が活用されることはしばしばであるが、映像の元になる三次元データの活用については、不十分でした。今回は、2005年に引き続き、パナソニック電工の長濱さんから、VR活用の現状と空間データの相互提供や共有化の仕組みの構築によるデザインマネジメントやエリアマネジメントの新たな可能性について語ってもらいました。
7月
・テーマ: 「東日本大震災: 復興の視座と今後のまちづくりのあり方」
・講師: 加藤 孝明 氏 (東京大学生産技術研究所 都市基盤安全工学国際研究センター准教授)
その大震災から4ヶ月余り。大地震・大津波・原発のメルトダウンによる甚大な被害が東北三県を中心に発生するという未曽有の超広域・巨大災害でしたが、4ヶ月を越える現在、10万人を超える人々が避難・転居を余儀なくされており、本格復興への見通しも定かではありません。この時期に、改めて今回の震災からの復興と今後のまちづくりのあり方、プランナーの役割等について、各地で復興マスタープランなどを手掛けてこられた加藤さんに課題提起を含めお話していただきました。
9月
・テーマ: 「東日本大震災からの覚書」
・講師: 三舩 康道 氏 (ジェネスプランニング株式会社代表取締役)
前回に引き続き、東日本大震災からの復興を今月のテーマとしたいと思います。今回は、「災害事例研究会」を主宰する三舩康道氏に、防災から減災へという発想の転換を基本として、震災からの復興まちづくり等について諸々の提言を語っていただきます。なお、伊藤滋先生との同名の共著が出版されておりました。
10月
・テーマ:「工場再開発による文化都市の創出
-恵比寿ガーデンプレイスの誕生による、まちの変貌と恵比寿ブランド」
・講師: 阿部 匠 氏
(恵比寿ガーデンプレイス(株)不動産技術本部長)
17年前にビール工場野跡地開発として誕生した恵比寿ガーデンプレイスは、渋谷、代官山と連担した文化都市ゾーンの一角を担い、住みたい街、訪れたい街のランキングでも高い評価を得る空間を形成しています。
今回は、ガーデンプレイスの阿部さんから、開発前後の事情から現在、そして、これからの発展の方向などについて語っていただきました。
11月
・テーマ: 「二次災害、人食いバクテリアから人々を守る」 --東日本大震災のガレキ処理と感染予防対策--
・講師: 石井 健三 氏 (株式会社FMI 副社長)
東日本大震災のガレキ処理が大きな問題となっています が、その一方で、ガレキ処理などにともなう破傷風の感染 やビブリオ・バルニフィカス菌の感染が心配されています。 今回は、塾メンバーの石井さんから、ハリケーン・カトリーナ後の対策で使われた技術が今回のガレキ処理で使われようとしている状況や今後発生する台風や地震などの自然災害時の感染予防対策に役立つ、安定化二酸化塩素の展望と課題について、現地の実情報告を交えてお話していただきました。
12月
・テーマ:「低炭素都市構造を目指して」
・講師:信時 正人 氏 (横浜市温暖化対策統括本部長)
環境モデル都市であり、今環境未来都市にもエントリー(12月中旬に結果発表)している横浜市が如何に都市を考え、如何なる温暖化対策を展開しているかについて綿密な話があり、また、現在推進中のスマートシティー構想の内実と環境未来都市の内容についての報告があった。